第7話 復讐
お嬢様の姿をした私は、誰が私を身代わりにしたのか、確認するため、舞踏会の会場を出て、公爵の屋敷に急いだ。
公爵の屋敷に戻ると、侍女の私は既に部屋に戻っているようだ。
部屋の窓から僅かに灯りの光が漏れている。
「さて、相談しているには公爵の執務室のはずよね。それなら、隣の部屋からテラスに出て、窓越しに様子を窺えるかしら?」
私は、誰にも見つからないように執務室の窓の影に移動すると、隠れて中の様子を確認する。
中にいるのは、やはり、公爵、執事、スグリの三人だ。
スグリは興奮しているのか、声が大きい。
「元々悪いのは第二王子の方じゃないですか!お嬢様が捕まっているなんておかしいです!」
「そうは言ってもな。相手が王子では仕方がない」
「なんとか、国王陛下に命乞いの嘆願ができないものでしょか?」
「命乞いって、処刑されるのか?!」
「そうなるだろうな。魔眼を使ったことによって、周りからも恐れられているだろう」
「そんな……。お嬢様は、好きで魔眼を手に入れたわけではないでしょうに――」
話に内容からすると、スグリがしきりにお嬢様を庇っている。一方、公爵は現状を受け入れているようだ。
「マリーを身代わりに……」
「今、なんと申した?」
「マリーを身代わりにしましょう。彼女ならお嬢様と背格好がそっくりです」
「いや、それは無理だ。いくら背格好が似ていても、魔眼を確認されたらすぐにバレてしまう」
「それでしたら、魔眼は危険だからと潰して仕舞えばどうでしょう」
「なるほど、だが、そうなると助かったとしても、盲目になってしまうな」
「それなら、マリーの目を移植すればいい。どうせ処刑されてしまうんだ。いらないだろ」
「そういうことなら、あの者を呼んではどうでしょか?」
「ヘリオットか……。そうだな。魔眼をやると言えば、なんでもやるだろう」
「それではすぐに手配を――」
アハハハハ! ここまで聞けば十分だ!
三人ともグルだと思っていたけど、私を身代わりにしようと言い出したのは、スグリだった!
スグリだけは、反対していてくれたと思っていたのに……!
バン!
私は、窓を開けて執務室に足を踏み入れる。
「誰だ! ――。ローズ! 捕らえられていたのではなかったのか?」
「お嬢様、ご無事で何よりです」
「マリーの奴、嘘をついたのか?」
「スグリ! 私とマリー、どっちが大事?」
「それはもちろん、お嬢様だ」
「そう。みんな私のためなら、マリーが犠牲になってもいいのね?」
「ローズ、さっきの話を聞いていたのか?」
「ええ、聞かせてもらったわ! 全員有罪! 特にスグリ! あなたのことは信じてたのに……」
「俺はお嬢様のことを裏切ったりしないぞ!」
「それが私に対する裏切りなのよ!」
「どうしたのだ、ローズ、さっきから様子がおかしいぞ」
「これは復讐です!」
「なにを言っている?」
「どうされたのです、お嬢様?」
「お前、お嬢様じゃないな! まさか、マリーなのか?」
「正解! ご褒美に、苦しませずにあの世に送ってあげる」
「なんだと!」
「なにをなさいます」
「マリー、お嬢様をどうした!!」
「凍りつきなさい!」
執務室に、三つの氷柱が出来上がった。
結局、スグリは最後までお嬢様のことしか考えていませんでしたか……。
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