第2話 身代わり

「痛い、痛い。目が」


 私が、目に激痛を感じ、目を覚ましたのは、眠りについてから暫く経ってからだと思う。


 だが、目を覚ましたのになにも見えない。まだ夜中だからだろうか?

 体を起こそうとしたが、起きることができない。

 これは、目隠しをされ、縛られている?


「静かにしろ。暴れても無駄だ」


 男の声がした。聞き覚えがない。


「目の痛みはじきに治まる」


 目に何かされたのだろうか。

 話ぶりからすると、向こうにはこちらの様子が見えているようだ。


「あなたは誰? 目に何かしたの?」

「お前が知る必要はない」

「兄貴、教えてやったらどうです。どうせ処刑されるのだし」


 もう一人男がいたようだ。

 その男が、気になることを言っている。


「処刑されるって、どういうことよ!」


 私は、声を荒げる。


「そうだな。なにも知らないままでは可哀想か――」

「お前さんは、公爵令嬢の身代わりとして処刑されるんだよw」


「私が、お嬢様の代わりに? そんなの無理よ。いくら背格好が似ていても、お嬢様には魔眼があるもの。それを確認されれば一目で別人だとわかってしまうわ」

「公爵令嬢の魔眼は、危険だからと既に摘出された」


「摘出って、くり抜いたってこと? そんな酷いこと……」


 ちょっと待って! この人たち、私をお嬢様の身代わりにすると言った。

 お嬢様の目は既に失われているが、私の目を確認されたらお嬢様ではない、とばれてしまう。

 それって……。


「私の目もくり抜くつもりなの? 嫌! 止めて!」


 私は絶叫した。


「安心しろ、お前の目の摘出も既に終わっている」

「うそ、嫌ー! 目を返してー!!」


「それは無理だな。お前の目は公爵令嬢に移植される」

「そんな。私の目なのに――」


「馬鹿だな。どうせ処刑されるんだ。今更目なんかどうでもいいだろうw」

「処刑されるのも嫌よ。お願い助けて! お願いよ!」


「静かにしろと言っているだろう」

「兄貴、声も出ないようにしろって指示でしたぜ」


「そうだったな。公爵令嬢への移植を先に済ませるつもりだったが、うるさいし、こっちを先にするか」

「嫌ー! この上、喉まで潰す気なの。止めて!」


「はいはい、もう少し寝ていような。寝てる間に済むからw」

「嫌ー! イヤよ……」


 何か、睡眠薬のような物を嗅がされたようだ。意識が薄れていく。

 次に、気がついた時には、目が見えないだけでなく、声も出なくなっていた。


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