第1話
「芝居は悪くないんだけどねえ」
それは耳にタコができるくらい聞かされた言葉。
「……どこがダメだったんでしょうか」
「ダメって言うか、ん〜なんて言えばいいのかな」
「すぐに直します」
「いや、直す直さないじゃないんだよね」
「どういうことですか?」
「言ったでしょ、芝居は悪くないって」
「じゃあ……」
「あのね、あなたには〝華〟がないのよ、
私は
オーディションは一次落ち、テレビやCM出演は全部エキストラ、仕事といえば知り合いのよしみで声をかけてもらった小劇場での舞台が何作品か。
どれも大切な仕事だけれど、決して大きな仕事ではない。
そういう仕事しか回ってこない。
その程度の、売れない女優。
もう辞めてしまおうか。
そう何度も思って、それでも諦めきれずにズルズルと、何年もアルバイトを掛け持ちしながら役者を続けている。
「芝居は悪くない」
「だけど華がない」
何度も何度も、ずっと言われてきた言葉。
「だから売れない」
芝居が上手ければ売れると思っていた。
どんな小さな仕事でもコツコツ頑張って、認めてもらえるようにって。
どんな役でもできるようにって。
そう、思ってたのに。
現実はそう上手くはいかないし、甘くない。
何でもできる
求められるのは、全てが75点取れる人間じゃなくて。
他が0点でも構わないから、何か一つ100点満点……いや、120点出せる。
そんな人間。
「……向いてないのかもな」
どこまでも遠く高く、手を伸ばしたって届かない。
そんな
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