罪の記憶

まにゅあ

第1話 現在

 穏やかな陽の光が差し込む庭で、金木犀きんもくせいがオレンジ色の花を咲かせている。

 携帯を片手に縁側えんがわのソファに腰掛け、数日前に届いたメールを読み返す。

 それは、小学校の卒後五十年を記念して行われる同窓会の案内状だった。

 十歳や二十歳の頃は未来への希望や不安を抱いていた。

 三十歳や四十歳になってからは迫りくる老いとの闘いが始まった。

 それらの歳のころは心のどこかで常に自らの年齢を意識していたのだろう。他人に歳を訊かれれば難なく思い出すことができていた。

 しかし、五十を超え、六十も過ぎた今となっては、生まれた年から数えることをしなければ、自らの年齢を答えられなくなっていた。歳というかせに囚われることがなくなったと肯定的に捉えることもできるだろうし、記憶力が劣っただけだと悲観的に考えることもできる。

 自分の年齢がうまく思い出せなくなっても、今から五十年前、まだ当時の私が小学六年生だった頃の、秋の遠足でのことは、今でもはっきりと憶えていた。

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