第89話 君がいるから。−4
「…蓮くん?」
しまった…口に出したけど、その後の言葉が出てこない。
「どうしたの…?言いたいことって…?」
窓を閉めてこっちにくる先生は向こうのベッドに座る。先生の顔がすぐ前にいるからちょっと緊張してしまう。そしてふと思い出したこと、それは先生にとって俺はただの子供じゃないのかってことだった。急に怯えて、その話を口に出そうとしたら変な考えが頭の中を埋め尽くしていた。
「蓮くん…先から変だよ。楽しくなかった…?」
「…」
でも…やはり怖いな、先生に告ることは。
逃げ道はない、このままぶつけるしかないんだ。
「ちょっとだけ…照明を消すから。」
「うん…?」
こんなことを言うのは初めてだ。どう言えばいいのか、俺には分からない…心の底から何度も「やる」って決めても緊張するのは仕方がなかった。だから先生の顔が見えない暗い部屋で告白をしたかった…そう決めた俺はベッドの隣にある照明を消して話を続ける。
「暗い…どうしたの?」
暗闇の中で慌てるさくらが蓮の隣に座る。
「俺…さくらが好きだよ。」
目を閉じた蓮は前にいるさくらに話した。すると、そばから「え」と声を出してしまったさくらに息が止まる蓮。驚いて目が丸くなる蓮だったけど、暗闇の中ではお互いの姿がよく見えなかった。ちょっとだけ、ためらっていた蓮が拳を握る。
…もっと勇気を出す。
「え…?いきなり…?」
「今までの好きとは違う…言葉だけじゃない…」
声が震えていた。ダサい…
先生はどんな顔をしているのか、俺のことをどう思っているんだろう。
「何のこと…?」
「ずっと、さくらのことが好きだった…こんな感情はさくらに気持ち悪いかもしれないけど…いけないってことって知っているけど…でも、でも…もうダメだ。」
「蓮くん…」
見えないところから先生の手が感じられた。
どんな顔をしてこっちを見ているのか気になる。すると、両手で体のあちこちを撫で回した先生の手が顔まで近づいてきた。よく見えない部屋の中、手探りで顔を探した先生は頬を伸ばしながら話を続けた。
「本当なの…?」
「うん…」
「何で私…?」
と、答える先生。
「そんなことを言わないで…俺は、好きだった。さくらが思っているよりも…ずっとずっと…大好きだよ。」
「…」
「曖昧な関係は嫌だったから…さくらのことを見るたびに幸せになるから…いつもそばから守ってくれたのはさくらだったからだよ。」
「…」
「こんなダサい…俺でも、さくらの…彼氏になれるかな…?」
なぜか、涙が出てくる。声がすごく震えて自分が言い出したことが上手く伝えたのかもよく分からなかった。この溢れた感情の行き先はどこ…?全部先生に向いていた。それから先生は何も言わないまま、静寂だけが部屋の中に流れている。
ぼとぼと…
静かな部屋で先生が涙を流していた。何も見えないところでそれに気づいたのは頬を伝ってベッドに落ちる涙の音がしたからだ。先生はどう答えてくれるかな…
じっとして先生の前に座っていた。
何も言えない、俺はただ先生の答えを待っていた。話したかったのは全部話したから…これから二人の関係はどうなるんだろう。
「やはり…蓮くんには敵わない…」
静寂を破る先生の声が聞こえた。
「うん…?」
「ずっと我慢していたよ。他の女に取られるかもしれない不安をずっと抱えながら…」
「…」
「私も大好きだよ。ずっと、出会ったあの日から今まで、そしてこれからも。私には蓮くんしかいないよ。愛してる…蓮くん、言ってくれてありがとう…」
心が暴れている、先生の言葉に嬉しそぎて涙が止まらない。こんなことがあってもいいのか、でも…でもそれだけでもう十分だった。俺のそばに先生がいてくれるだけで、もう十分だった…それを聞いだだけで迷っていた心の行き先が決められた。
「愛してる…さくら。」
と、言った後は先生からすぐキスをしてくれた。
「私はね。蓮くんがいるから楽しく生きていくんだよ…ずっと甘えても、しつこく執着しても…蓮くんのことを困らせたのに、それでも私のそばにいてくれてありがとう…」
「…ずっと、一緒にいよう。」
「うん…!」
どんな人も先生の代わりにはならない。
深まる夜。照明をつけて先生の方を見つめていたら、真っ赤になった顔をして目を閉じていた。俺はそばからじっとしている先生の上からこっそり口づけをした。すると、目を開けてこっちを見つめた先生が俺の首に腕を回してこう話した。
「蓮くんが脱がして…」
「うん…」
着ていたシャツを脱がして…スカートのチャックもゆっくり下ろした。目の前の状況に緊張して先生を見つめると、照れる顔と照明の色に先生の体をもっとエロく見えた。顔を赤めて、一気にスカートとその網タイツを全部脱がしてしまった。
「年下の蓮くんに…恥ずかしい…」
震える声でこっちを見る先生。
先生の体を触るたびに感じられるこの温もり、片手で自分の目を塞いだ先生が俺の手首を掴んで自分の方に引っ張っる。
「来て…」
体をくっつけた俺の耳元から聞こえる二文字、それから頭が真っ白になるほどの夜を過ごした。
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