第81話 NTR。

 気づいた時には下着姿をしている山口とキスをしていた。ベッドに倒されて山口と目を合わせた時、ふと昔のことを思い出してしまう。昔のことは忘れて仲良くしたかったのに、なんでこうなってしまうんだ。怖くて体が動かない…


 それと、気持ちいいことってなんだ…


「はあ…」


 唇が離れた時の気持ちは言葉でできないほど、怖かった。今すぐでも逃げ出したいのに、一宮のことを思い出したら体が固まってしまう。いい友達になりたかった俺の甘かった考えを憎むだけ、今はこのベッドから離れないんだ。


「感じてる…?」

「何を…」

「気持ちいいでしょう…?キス…」

「知らない…そんなこと。」

「なんで…?私を見て興奮したくせに…目を逸らさないで。」

「服…着て、頼むから…山口。」


 でも、山口は俺の話を聞いてくれなかった。

 俺を見下していた山口が体を重ねて服の中に左手を入れる、小さい手で上半身を撫で回しながら耳元で恥ずかしい声を出していた。


「…」


 すると、我慢している俺に気づいた山口が耳を軽く噛む。


「なんで…私のことを拒否するの…?」

「これは普通じゃない…」

「普通…に蓮くんのことが好きだったよ…」


 さりげなく自分の気持ちを言い出したみゆきに恐怖を感じる蓮、それは再び中学時代の悪夢を思い出させる言葉だった。


「ごめん…山口にはもっと似合う人がいるから…無理だ。」

「なんで…?他の女がいるの…?私じゃダメなの…?」

「そんな話じゃない…」

「私、可愛くない…?蓮くんのタイプじゃない…?」

「いや…そんな。」


 そう言ってから蓮を抱きしめるみゆきはさりげなく蓮の首にキスマークをつけた。


「あっ…それはダメ…っ…!」

「ううん…っ!」

「山口…」


 ダメだ…抱きしめられてこっちから引き離せない。

 山口は本気でやってる。誰か…誰か止めてくれ…朝陽、今田止めてくれ…と、叫びたかったのに怯えてどんな声も出せなかった。俺がそのまま目を閉じて山口にやられている時、首筋につけられた大きいキスマークをスマホで撮った山口がにやつく。


「似合うよ…見て。」


 そこには山口のVサインと半裸の俺が写っていた。


「…削除してくれ。」

「へえ…なんで…?いい思い出じゃん。」

「そんなこと嫌だから…」

「蓮くん変わった…」


 じっとしてこっちを見つめる山口が何を考えているのか分からない。ここから見えるのは無表情の山口だけ、何か我慢しているようだけど…山口はしばらく何も言ってくれなかった。


「…」


 なんで私の話を聞いてくれないの…?

 蓮くんは私のものだよ…私の話を聞いて、私に従って、私のものになって…それだけで十分なのに、なんでいつもそうやって逃げるの…?私から逃げられないよ…もう二度と蓮くんと離れたりしないからね。


 そう、考えているみゆきが小さい声で話した。


「今夜は誰もこの部屋に来ない、二人だけだよ。」

「変なこと言うな…」

「どうせ2階には二人がイチャイチャしてるからね。私、何もしないからそばで寝てもいい…?」

「いいけど、約束してほしい。」

「何を…?」

「俺に何もしないこと。」

「うん…分かった。」


 そう言ってから照明を消して一緒に寝た。


 すでに疲れていた蓮はすぐ無防備な状態になってみゆきより早く寝入ってしまった。すると、そばでその顔を見つめていたみゆきがこっそり首筋を舐める。一つだけじゃ気が済まなかったみゆきはその首に自分の証をもっと、もっと残してあげた。


「こんなに無防備な蓮くんに手を出さないと思ったの…?へえ…蓮くんも単純だよね。そんなところが可愛いけど…」


 息を切らして自分がつけてあげたキスマークに満足するみゆき、次いで体を起こしたみゆきは蓮のシャツを脱がして自分の体をくっつける。もう自分のものになったような扱い、その温もりを感じながら蓮を抱きしめた。


「あ、これは…?」


 そしてつい忘れていたテープを見つけた。脱がされたことも知らずぐっすり眠っている蓮、その体に貼っているテープを剥がしたみゆきはやっとその中に隠れていた真実を確認した。


「やはり…全部嘘だった…」


 その痕に驚くみゆき。


 そこにはさくらにつけられたキスマークと噛まれた歯形などが蓮の体に残っていた。誰かが先に残したその痕に信じられない顔をするみゆきはそのまま理性を失う、それから自分が何をやってたのかさえ覚えていなかった。


「やはり…先の約束はなし…」


 蓮の前からブラを外してパンツを脱ぐ、裸になった後は蓮の服も脱がせてその体に乗る。そして口に咥えているコンドームを上から被せて、蓮くんが目覚めないようにゆっくり根元まで手繰り寄せた。


「嘘をついた蓮くんには…」


 片手で蓮の上半身に掴んだみゆきが反対側の手で少しずつ…


「痛い…」


 立っている蓮のものを…


「ううっ…!あっ…」


 自分の中に…


「はあ…っ…はあ…はあ…痛い。痛い…無理…」


 入れるのは失敗した。


 緊張して息を切らすみゆきはそのまま蓮のそばにくっついて一晩を過ごした。静かな別荘の外から涼しい潮風が吹いてくると、裸姿の二人はお互いを抱きしめてまた新たな朝を迎える。

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