第61話 心を静める一時。−2

 先生と過ごす時間が好き、そう言えば最近の先生は…ちょっと積極的になったかも。前はこうじゃなかったはず、先生からすごく愛されている感じがするのはなぜだろう…?トキメキが止まらない、プラネタリウムからのキスで俺ももう我慢できないように変わっていた。


「蓮くん…?」

「…」

「蓮くん、うちに夕飯食べに行かない?」

「あ!行きます!」

「うん。」


 当たり前のように手を繋ぐ先生に笑みを浮かべた。家を出る前に先生が玄関で立ち止まる、首を傾げて先生の方を見つめたら急に振り向いて俺を抱きしめた。何かと思ったら、くんくんと匂いを嗅いでいる先生だった。


「どうしました…?」

「うん!もうしないね。」

「何がですか?」

「他の女の匂い…」

「…」


 他の女の匂いって…なんだろう。


「前に変な匂いがしたの、蓮くん…もしかして浮気…?」

「んなわけないでしょう!」

「私は蓮くんの匂いが好き…」


 そう言った先生の首筋に鼻をつけて、そばにいた時からかすかに感じていた先生の匂いを直接嗅いでみた。先生はどうしてこんなにいい匂いがするのかな…ふとこんな俺と一緒にいてくれる先生に心の底から感謝していた。


「は、恥ずかしい…蓮くん。」


 蓮の肩を両手でしっかり掴んださくら、頬を染めた彼女は触れているその感触にピリピリしていた。


「私も先生の匂い、すごく好きですよ。寝る時まで嗅ぎたいほど…」

「何変なことを!このバカ!」


 頭を叩かれた。


 ……


 先生の家で一緒に夕飯を食べながら時間を過ごした。夕飯の後、暇になった俺に先生は借りてきた映画を出して、久しぶりに二人で映画を見ることになった。さりげなくそばに座る先生が手を重ねて、俺の肩に頭を乗せた。なんか恋人みたい…


「これね、小春が面白いって言ってたよ。」

「へえ…」

「ちょっと、エロいかも…洋画だから…」


 こうやって二人はくっついたまま洋画を見ていた。リアリティがある洋画なんだけど…てか、女優さんが積極的に仕掛けるシーンがいっぱいあって顔を赤めるほど、恥ずかしくなっていた。小春先生にはこんな趣味があったのか…


 そばで見ているさくらも同じことを考えていた。


「…」


 先生はこんなことを見ても動揺しないのか、さすが大人の余裕。


 ———すごく動揺している。


「うう…ダメだ。恥ずかしくなってきた…」


 俯いてテレビから目を逸らした。ほぼエンディングまで見たけど、頭に残ったのは主人公たちのエロシーンばっかりで何一ついいところはなかった。小春先生…


 恥ずかしくて目を閉じたらそばにいる先生が指でつついた。顔を上げて先生の方を見つめていたら、赤くなった顔をしてうじうじする先生は何か話したいことがありそうだった。


「どうしました…?雪原さん…?」

「うう…蓮くん、映画が終わったら家に帰るの…?」

「そうですけど…?」


 何…この雰囲気、先生の顔が真っ赤になってる。


「今日はうちに泊まって!」

「え…?いいですよ。すぐ隣だから…」


 そんな話ではなさそう、これは一緒に…寝るってこと。泊まってって言われたらそれしか思い出せないけど、まぁ…今までけっこう寝たこともあったし。でも、こうやって普通に寝るのは初めてだから…こんなことしてもいいのか。


「えいーっ!」


 ぼーっとして考える時、先生が俺の首に何かをかけてくれた。触ってもよく分からなくて先生の方を振り向いたら、どっかに繋がっている紐を握って先生はにやついていた。なんかこっちを見てにやついている先生が怖く感じられる…


「泊まるんでしょう?蓮くん…?」

「…いいえ、普通に泊まるのはダメですよ…今日はこれで帰りまっーふっ!」


 立ち上がる時、首輪を引っ張るさくらによって強制的に座る蓮。


「えっ…?」

「こっちまで引っ張る前に答えてほしいなー」


 あの紐は俺の首と繋がっていたのか…マジで首輪をつけてもらったんだ。それは冗談じゃなかったのかよ、前に言われたことは覚えているけど、マジで買っておいたとは思わなかった。


「と、泊まります…」


 答えを聞いたさくらが笑身を浮かべる。


「じゃあ、私はお風呂に入ってくるから大人しくしておいてね、ワーンちゃん!」

「はい…」


 先生に犬扱いをされている…


 しばらくぼーっとしてスマホをいじっていたらお風呂から上がった先生が体にボディータオルを巻いて居間に出る。濡れた髪と湯気が立つ体、スッキリした顔でそばにくる先生はしゃがんで俺に目線を合わせた。


「蓮くんも入って。気持ちいいよー」

「はいはい、それより…服を着てください!」

「えへっ!」


 先生の家でお風呂なんて…なんの状況だ。一体…

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