♡ なんで女王様に仕えないといけないの?♡

x頭金x

第1話

 バックパックにパンパンに詰められた荷物を背負いながらお城への階段を登っていると、ふと思った疑問がそのまま口をついた。義男は周りの奴隷達にサッカーボールのように蹴られ、ボロ雑巾となって便所掃除に使われた。


 汚物塗れの義男のもとに奴隷長がやって来て諭すように言った。


「そういう決まりなんだよ。お日様が西から昇ることはないだろう?そういうことなんだよ」


義男は傷だらけの体を引き摺りながら寝床へ向かった。寝床では他の奴隷達が大貧民で遊んでいる。


「あ、お帰り義男。クッセーなー、お湯用意してあるからそれでさっさと拭いちまいな。お前も一緒に大貧民やろうぜ」


 何事もなかったように義男は迎え入れられた。今まで通り、このまま、現状維持で、行きましょうや、そういう事なのだ。


 奴隷長が寝床にやって来た。女王様のご褒美を持って。


「ありがたや、ありがたや」


 奴隷達はご褒美を貪った。皆一様に恍惚の表情を浮かべている。義男は貪らなかった。随分前に貪ることをやめた。その頃から疑問の芽は発芽していて、今日地表に出たのだ。


 義男は大貧民で革命を起こした。今までの価値観がひっくり返り、勝者は敗者に、敗者は勝者になった。


 次の朝、義男の姿はなかった。お日様が西から昇らないのは昨日までのことだ。

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