報告その3

 こんにちは。小林卓也です。

 F先生に報告することがあります。北山小学校の謎のことです。

 水曜日の夜に、四年生の団員の城山くんがじゅくの帰りに学校の前を通りました。そのとき、今は使われていない四かいの空き教室に電気がついていて、まどに人のかげみたいなものがうつっているのを見たというのです。この報告は今日の昼休みに教えてくれました。


 ぼくはこの報告を聞いてすごくどきどきしました。そして「空き教室 謎の明かり事件」という名前をつけました。ほうかごになって探偵団に集合をかけました。四年生は三人、五年生は二人が出席しました。副団長の花崎さんはじゅくがあるので帰りました。集まった五人で話し合って、さっそく空き教室を調べにいくことにしました。

 四かいは六年生がつかっているかいで、下級生はふだんは行くことがないので、かいだんを上りながらちょっとどきどきしました。四かいにつきました。ほうかごなので少し暗くなりかけています。ろうかはしーんとしていてだれもいません。空き教室はろうかのつきあたりにあります。ぼくたちはくっつきあってろうかをすすみました。

 空き教室のドアにかぎはかかっていませんでした。ぼくがせんとうになって教室に入りました。教室の中にはつくえもいすもなくて、黒板だけがのこっていました。だれかか「なんかへんな感じがするね。」といいました。その声がひびいて聞こえました。ぼくは夜にこの教室だけあかりがついているのをそうぞうしてこわくなりました。だれかが「電気をつけてみよう。」と言いました。四年生の城山くんが教室の前にあるスイッチを押すとぶじに電気がつきました。教室の中が明るくなったので、もう一度くわしく調べてみました。教室の後の方に、ピンク色のおり紙の小さなきれはしが四つ落ちていました。もしかしたら何かのしょうこになるかもしれないと思って、ひろっておきました。まどを見るとぼくたちの顔がうつっていました。いつのまにか夕方になって外がくらくなっていたのです。ぼくはもう帰ろうとみんなに言いました。五人でくっつきあいながら電気を消してろうかに出ました。ろうかもすっかりくらくなっていて、すごくこわかったけれど、ぼくたちはがまんしてゆっくり歩きました。ぼくはかいだんのところでちらっと空き教室の方を見てみました。電気がついていたらどうしようと心配していましたが、まっくらだったのでほっとしました。


 これが「空き教室 謎の明かり事件」の調査の報告です。あしたはまたみんなで集まって、この謎について話し合いや推理をする予定です。謎がかいけつできたら、また手紙を書きます。

 それではさようなら。


                          小林卓也


 追伸

 花崎さんに、F先生が失礼しましたってあやまってたよと伝えました。すると花崎さんは「大人はなかなかあやまらないんだよ。Fさんっていい人だね。」と言っていました。子どものくせにえらそうだなと思いましたが、花崎さんがにこにこしていたので、まあいいやと思いました。

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