大晦日の思い出

凡人EX

大晦日の思い出

 年末の過ごし方には、各家庭、各個人で違いが出てくることだろう。誰と過ごすか、何処で過ごすか。食べるもの、見る番組、年越しの瞬間。僕が思いつく限りでもこれだけある。

 僕が思いつく限りでは、と言うより、僕が年末の過ごし方で重視している点をつらつら並べただけなのだが。


 さて。年末というか、年越しに食べるものと言えば、やはり年越しそばであろう。いや、僕の場合は年越しそばなのである。なんせ小さい頃からそうだったのだ。それなりに時が経った今でもその感覚は刷り込まれているものなのだろう。

 その年越しそばだが、手打ちという訳では流石にない。ここで出てくるのが「赤いきつね」と「緑のたぬき」なのだ。

 いや待てと。赤いきつねはうどんだ、そばでは無いだろうと。そう思う人もおられるだろうが、これには僕の来歴が関わってくるのだ。


 僕が小さい頃。具体的には5歳とか6歳とかその辺りの年齢だった頃、僕はそばの美味しさが全く分からなかった。むしろ嫌いだった。

 この嫌いの理由は当時の自分でも分かってはいなかったのだが、こんなのは大人が食べるものだと近づく事が無かった。祖父母宅に集まり、爺ちゃんと父さんがそばを啜っている横で、年越し特番を見ながらうどんを啜っていたのだ。

 今でもそうなのだが、僕が赤いきつねで好きな所は、出汁の染み込んだ揚げを堪能できることだったりする。当時は染み込んだ出汁を揚げから吸って、また戻して、染み込んだら吸って……と、随分汚いと言うか、行儀の悪い食べ方をしていたものだ。今では流石にそんな事はしないが、あの揚げはやはり魅力的なのだ。


 少し話が逸れるのだが、年越しに赤いきつねや緑のたぬきを食べるという習慣は祖父母の影響である。そして、祖父母がそれらを年越しに食べるのかというルーツは分からなかったりする。まあ多分、手作りが面倒になったとかそんなのだろう。あの祖母なら案外間違ってはいないんじゃないかと思っているわけで。


 さて、それから具体的に何年経ったのかは分からないのだが、僕はいつの間にかそばを食べるようになっていた。ただ何時からかは分からずとも、何故かは大体覚えている。爺ちゃんの影響だ。ただ単純に、爺ちゃんが食べていたから食べてみたくなったと言うだけなのだ。僕は非常におじいちゃんっ子であったから。ただそれだけの話なのだ。

 僕が爺ちゃんを真似して始め、今でも続けている事はそれなりに多い。写真とか。が、まあ今は関係ない話なので割愛しよう。

 そんなこんなで、今となっては年越しには緑のたぬきを食べるのが僕にとって通例となっているのだ。また話が逸れるが、そこからそばが好きになって、夏にもちょくちょくそばを茹でて冷やしたりもする。夏に麺類を食べる時は基本ざるそばだ。そうめんでは無いのだ。

 が、緑のたぬきはお湯を入れるだけで済むのが有難い。そんな訳で大晦日は緑のたぬきを頂いている。温かいそばを食べ進め、天ぷらをある程度麺が減った時に入れて、ザクザクとした食感と共にまたそばを楽しむのが好きなのだ。ああ、勿論七味を入れるのも忘れちゃいけない。辛味が出汁の風味を引き立ててくれる。それを啜り、ザクザクな天ぷらを食べる。これが本当に美味しいのだ。


 とまあ、こんな風に大晦日を過ごす僕達家族。僕の受験がある年でも、この時には皆と年を越しにリビングに集まる。近年は祖父母宅で年越しを過ごす事も少なくなったが、母さんや妹達と赤いきつねと緑のたぬきを食べて過ごしている。父さん?恐らく友達と過ごしているのだろう。まあぶっちゃけ知らない。昔からかなり奔放な人なので、元気ならそれでいいやとか思ってたりする。

 とにかく。執筆時点では年末も近いので、また赤いきつねと緑のたぬきの世話になるだろう。妹がうどん派なので、かつての僕のようにそばに鞍替えしたりしないかと、その辺も含めて楽しみである。


 それでは皆様、良いお年を。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

大晦日の思い出 凡人EX @simple-flat

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ