睦月 ツバキ
パッサパッサっと小風を生み出せそうな長い睫毛。
三百六十度すべてを見通せそうなつぶらな瞳。
ツルリンピカリンと効果音が出そうな四本の美脚。
キラリンキラキラと効果音が出そうな銀色のたてがみ。
頭頂部と背骨付近に攣っているような違和感。
咥えているのが薔薇だったらどこぞの少女漫画に出演できそう。
どうも、ペガサスに生まれ変わった俺です。
前回の彼女の死から、少し、ほんの少しだけ、自分と彼女のことを思い出しました。
花を手渡そうとする理由も。
「まるで血しぶきね」
ペガサスの俺と同じ銀色の長い髪で口元以外を全部隠していた彼女は、格子と格子の間の隙間からツバキを受け取ると、口元を歪めて笑った。
一番初めの記憶。
人間だった俺と彼女がほのぼのと会話できた世界との落差に、激しくグルグルする。
「あーあ。あなたが来るから私は魔女だって認識されて処刑されるんだけど、あなたが来ないと私は寂しいから。これからも来ないとゆるさないわ」
チョウグルグルして、気持ち悪くなります。
なんでこーなるのと叫びたくなる。
前回の河童師匠が懐かしいよ。
「私もこのツバキみたいに首と胴体を真っ二つに引き裂かれるんだって」
ううやめて。
ほんと、ゲロゲロッテマス。
卒倒したくなります。
「そんな顔しないでよ。今度生まれ変わる時はあなたと同じペガサスになって一緒に飛ぶから。なんて。魔女だったら飛べるのにね」
彼女は正真正銘魔女だ。
けれど、所謂落ちこぼれの魔女。
魔女の力はない、一生懸命なお医者さんだ。
「あなたに懐かれた人間は始末するのに、あなたは始末をされない。いいえ、違うわ。責めているんじゃないの。ほっとしているの。だって私、言ったでしょ。だから。待っていてね。約束」
耐えられないかも。
彼女の処刑を目の当たりにして、この輪廻転生を初めて、強く拒みたくなった。
(2021.12.14)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます