霜月 ヒマワリ
黒い瞳孔の周りに鮮やく橙の虹彩。
曇天にちらつく火の粉のような身色。
太くなったり細くなったりできる能力。
頭には羽角と呼ばれる斜め耳のような飾り羽があるコノハズクの一種。
どうも。アフリカオオコノハズクに生まれ変わった俺は今曇天の中、鋭い爪を持つ四本足指でヒマワリを掴んで飛行中。
届け先は無論、彼女だ。
「よーしよしよくやった!」
まあ、なんて素敵な笑顔なのでしょう。
過去四回では見られなかった、とても生き生き溌溂とした表情です。
闇を背負って爛々と輝く目をこれでもかとかっぴらき、ヒマワリを片手で握り潰して魔法詠唱。金貨を作り出しては、まあ、何と言いましょうか。下品な笑い声を腹の底から吐き出して、たまんねえなと言う彼女は本当に全身から力が迸っていました。
「おいおい、相棒。これでまたたんまりと美味いもんが食えるな」
贋金作りで、しかも使いまくっていて、大罪を犯しているわけですが。
本当に、なんの衒いもない笑顔を俺自身に向けてくれるのは、嬉しいわけで。
ヒマワリそのものを喜ばれたわけではないけれど、結果として彼女自身が受け取って喜んでくれているわけだし。
いいかあ。
突然動いたかと思えば寝始めたり、コロコロ鳴いたり、太くなったり細くなったり、瞼を上げたり下ろしたり、飛んだり跳ねたり。
ヒマワリを届け続け、ころころと変化に富んだ感情を全身で伝えて。
平穏とは決して言えなかったけれど、感情の起伏が一番激しい生を謳歌できたばかりか。
初めて彼女に看取られて生を終えた。
多分きっと。
これで俺の旅は終わり。
解決しないまま、なんて、ざらにあるだろうから、悔いはない。
今度は真っ新な魂になって生まれてくるよ。
もしかしたらまたあんたに花を渡すのかもね。
(2021.12.9)
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