第110話

「で、教えてくれる?」


 私は自室のソファに座り隊長さんに話しかけている。


隊長さんは私の横に立っている。今日はお休みだから椅子に座っても問題ないはずだけど、筆頭さんの目もあるから遠慮したみたいだ。




「どうぞ。私にわかることならお答えしますよ。姫様に隠すことはありませんからね」




何でも答えてくれる様子なので、私は遠慮なく何でも聞くつもりでいる。


まずは基本的な事から。順番良く聞いていく事が一番だろう。




「ありがとう。まずはデビューの話だけど、私も本当にするの?」


「そこは間違いありません。姫様も陛下に言われていましたが、我が国では10歳の時にデビューします。これにはいろいろ意味がありますが、大きな意味は顔見せです。学校に通う時は2種類の学校があります。一つは7歳からの幼年学校と、もう一つは10歳からの普通校です。どちらも男女とも通うことが出来ます。幼年学校の場合は子供本人が優秀である場合と、親が早くから学校に入れて厳しくしつける場合のどちらかです。普通校の場合は残りの子供達が全員通うことが出来ます。学校の入学に貴賎は問いません。試験にパスできれば誰でも入れます。逆を言えば試験にパス出来なければ入ることは出来ません。これはどの家の出身でも変わりません。卒業も同様です。卒業試験をパス出来なければ卒業は出来ません。付け加えるなら不正も出来ません。試験官は当日に発表されますので。10歳のデビューは学校に通う子供達が、学校で戸惑うことが少ないようにと、デビューという形で出会っておくのです。そうすれば学校で話しやすいという形になります。学校生活がスムーズに行くようにとの配慮から始まった事です」


「そうなのね。デビューの意味がわかってよかったわ。その理由なら私がデビューしないのは逆に問題になりそうね。それと、これもすごく気になっているのだけど、陛下が次も頼むって言ってなかった?」




「言ってましたね」




「どういうことかしら?」




「姫様。お忘れですか?陛下を説得するときに、許可があれば次もあるんじゃないですか?って私が言いましたよね。そのへんかと」




「つまり提案がなし崩しで決定事項になってしまった、というわけね」


「そう言うことだと思います。相手は陛下ですから」


「それはそうね。そこは諦めるしかないのかしら?でも、毎回はちょっと。自信がないわ。不定期に時々で大丈夫かしら?たまに私が招待する感じで。特にはっきりは決めてないものね」


「そうですね。定期的に来れるほど陛下も暇ではないと思うので、大丈夫と思いたいです」


「つまり、わからない、って感じかな?陛下しだい。提案が来たときに相談して決めるかたちが良いのかも」


「それがよろしいかと」


「そういえば、陛下からの誕生日プレゼントは何か知っている?デビューに合わせて、って言っていたけど、何だと思う?」


「残念ながら。そこまでは聞いていません。何となく噂になっていることはありますが、事実かどうかは聞いていないので」


「噂?何か聞いているのね?噂で良いから教えてくれない?気になるわ」


「申し訳ありません。さすがに噂では」


「だめなの?」




噂がすごく気になる。欠片でも良いから教えてもらえないかしら?そこから何か考えてみるのに。


ダメかな?


通用するとは思えないけど、子供っぽく聞いてみようかな。




私は子供の特権の少しお目目ウルウルにして聞いてみた。




「申し訳ありません」




隊長さんには通用しなかった。


やはり普段の私を知っているから通用しないようだ。


ここは潔く諦めよう。その時になればわかることだ。


その時に対応すれば良いし。




「わかったわ。その様子では教えてもらえなさそうだし。だったら、デビューは何をするの?ダンスだけ?」


「そうです。晩餐会ではなく舞踏会になるので。軽食と飲み物くらいになります。挨拶とダンスが中心です。年齢も10歳なので開始も終了も早いですし」


「じゃあ、紹介があって、挨拶して、ダンスを一曲踊れば良いのね」


「そうですね。何曲踊るかはわかりませんが、流れ的にはそんな感じです」


「だったらそこまで心配はいらないかしら?」


「姫様なら大丈夫だと思いますよ」


「そうなると、本格的なマナーとダンスの練習が始まるのね」


「はい。それが終われば、学校に行くことになります」


「10歳から通えるみたいだけど、私は来年の入学になるのかしら?」


「デビューして、その者たちが次に入学する感じです。ですので実際は10歳の誕生日が終わったら通える、と思っていただけたらと思います」


「みんなそれに合わせて、ダンスやマナーの勉強をするのね」


「そうなります。姫様は言葉使いの方は問題ないと思いますので、挨拶、ダンスを集中的にすることになると思いますよ」


「やっぱり。そうなると私は筆頭さんの本格的なマナーの特訓が始まるのね。デビューの日付については仰っていなかったけど、だいたいの予定日はあるのかしら?」


「いつもなら年末が多いですが、正式な日にちを決めるのは典礼部です。儀式や舞踏会の日程を決める役目なので。発表するのもそこからなので、でも年末と思っておけば大丈夫だと思います。慣例でそこに合わせている親達も多いので」


「マナーの授業から逃げられないのは覚悟しておかないといけないようね。料理の許可が問題なくでたので、それで良しとしましょう」




気になる事は他にもあるが、今のところはこんなものだろう。 




私は目的を達成できた事で、今日を締め括る事にした。

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