第72話

「あの者たちの裁判を言い出していたではないですか…」


「宰相。私は陛下の評判と、この国の法律のために言いだしたんですよ。はじめに言いましたよね?」


大前提を思い出してもらいたい。




「確かに言われましたが、実際には極刑は免れる可能性もあります。確実ではないのが裁判です」


「勿論です。陛下が見付けた案件なので、忖度も考えれば、ほぼ極刑だと思っています。でも、駄目なら駄目でも良いのです。」


「なぜですか?こんなに嫌な思いをしたのですよ?」




宰相。大丈夫ですか?私よりあなたの方が人が良いと思います。


なんか自分が黒い人間に思えてきた。




「宰相。よく考えて見てください。極刑でない方があの者たちは辛い思いをすると思いませんか?」


「そうでしょうか?」


管理番も一言、わからないらしい




「私は一応王女です。他国の姫ですよ?しかも未成年の。わかりませんか?」


二人からの返事はない。騎士さんからもだ。


まだだめらしい




「陛下の、国の客人で、留学生。その上子供、その姫の品格維持費の横領。ネグレクト、軟禁、そして他国の人間ということは外交問題になります。それを引き起こし、下手をすれば国家反逆罪にも問われる、忘れていました。不敬罪もありましたね。その上それを発見し、裁判を申し付けたのは陛下。そんな人を家族や親族が迎え入れてくれると思いますか? 可哀想って思ってもらえると思います?」




沈黙だけと思っていたら反応があった。




「…帰って来られるのは困りますね…」


騎士さんは正直だ。私も同意する




「そうなりますよ。誰でもそう思うと思います。それに身元引受人達もどう思われるか。城に入れるという事はそれなりの保証先でしょうからね。その人たちも困る。帰ってきて欲しくないでしょうね。正直。大多数の人たちは極刑にしてくれればよかったのに、って思うと思いますけど。付け加えれば、あの人たちの直属の上司も困るでしょうね。管理責任が問われるでしょうから。」




「わかってて、裁判を言われたのですか?」


宰相、だから大前提を思い出してってば。




「さっきも言いましたけど、陛下の評判と国の法律の未来を守ったのです。犯罪者よりもそちらの方が、この国の未来を担う人たちの方が大事で、もっと大勢の人に影響を与えると思っています。」 




「そうですね…犯罪者よりも国の未来の方が大事です」


騎士さん、さっきからありがとう。私の考えを分かってくれて。




そんな話をしていたら爆笑が聞こえてきた。


宰相がギョッと声の方を見る。声の持ち主は陛下だ。 




身体を二つに折り曲げ、苦しそうに笑っている。騎士さんも驚いていた。その反応から普段、そんなにない事なのかもしれない




「面白いな、姫」


息も絶え絶えに言い出した。


ここはありがとう?違うか…


言葉が出てこなくて沈黙してしまう。




「いや、すまない。褒めているつもりなのだが」


「そうは聞こえませんが…」


ボヤく位は許してほしい。面白いなんて言われるとは思ってなかった。


こんなに頑張ったのに。




「姫、悪かった。」


反応のない私から不機嫌さを感じ取ったらしい


陛下を半眼で見ていたからだろう




「ありがとう。助かったよ。」


「そう言っていただけると嬉しいです」 


今度は柔らかく、真面目に言ってくださったので、そこは受け入れる。


笑われるより褒められる方が嬉しいものだ。




その後に爆弾が落ちてきた。


「それでな、姫。息子の嫁にならないか?」


「はぁ?」




宰相も管理番も陛下の方をポカンと、見ている


と言うことはこんな事を普段から言う人では無いのだろう。




なんで?どういう事?




やっとモロモロ終わったのに…


やっと落ち着いて、部屋に戻れるって思ったのに…




陛下、変な事、言い出さないでください


泣きそうだ。

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