第56話
あれから半年が過ぎた。
管理番と商人との関わりは継続している。
商人は月に一度離れに来る。商品の売上の報告と次の仕入れの商品確認に、他には後々の仕入れの相談や商品の販売方法の相談を受けている。
管理番は月に2回来る。離れのストックの確認と売上や私の貯金の額の間違いがないかの確認だ。
そのため管理番は月に2回、そのうちの1回は商人と二人で来る。
私は月に2回二人が来る日が一番の楽しみだ。
2人が来る日は朝から仕込みをして美味しいランチを作るようにしている。
二人もその日を楽しみにしていてくれるのか朝食を少なめにしていると言っていた。
そうなるとさらに気合いを入れて作ってしまうのは人情と言うものだ。
今日は二人が離れに来る日だ。
半年も経つと来る日も自然と決まってくる。
「今日も喜んでくれると良いけど」
私はキッチンに並んで料理を見る。後は仕上げをするだけになっている。
商品の仕入れも順調だ。私が欲しがっていた品もほぼ揃ってきている。
醤油・お味噌・のり・鰹節・昆布・胡麻など順調だ。
探してもまだ無かった商品は作ることにしたのだ。
納豆や豆腐は作り、大葉のようなものは栽培をする事にした。
商人がものすごーく頑張ってくれた結果だ。
ありがとう商人。
この辺の事はいつかゆっくり思い返したいと思っている。
商人がくるときは彼が持ってきてくれた商品を使うようにしている。
そこから販売方法を考えていくようにしているからだ。
商人は一石二鳥だと喜んでいる。
管理番は純粋に新しい味を食べれると喜んでいた。
私は好きなだけ料理を作れるので喜んでいる。3人3様に損がないので3得だ。
私は誰も損をすることがないので良い関係だな、と思いニヤニヤしながら料理を眺めていた。
「姫様、管理番達がまいりました」
「ありがとう。入ってもらって」
侍女の連絡に返事を返した。侍女も慣れたのか何も言わずに入室を促していた。
「失礼します」
二人が入ってくる。
「久しぶりね。二人とも。」
「お久しぶりでございます。」
「ご機嫌如何でしょうか?」
管理番と商人はいつもの挨拶を口々にしている。
「ありがとう。私はかわらずよ。」
二人に会うと自然と笑顔が出てくる。お腹を空かしているであろう二人に着席を促した。
「まずは食事にしましょう。お腹がすいたでしょう?」
「ばれてますか?ここに来ると美味しい料理があると思うと・・・」
嬉しそうな商人がいそいそと席に着こうとすると
「商人、すこしは取り繕え」
管理番が商人の裾を引く。そんな管理番を『何いってる?』と言う顔をして呆れたような眼で見る。
「一人だけカッコつけて…お前だって楽しみにしているだろう?ここに来るまで足が速かったじゃないか。それに朝食は抜いてくれば良かったって言ってただろ?」
「ばらすなよ」
相変わらず仲の良い二人だ。来る度に繰り返されるコントなやり取りを見ながら笑いを堪える。
「分かってるわよ。さあ、座って」
以前に約束した『ざっくばらん』は定着した。私たちの時は取り繕う様子はない
「姫様。今日の料理はなんですか?」
管理番は何も言わないが、商人の問い掛けには同意しているのか、キッチンの中を覗きたいのか我慢しているのかソワソワしている。
「後は盛りつけるだけよ。取りに来てくれる?」
私のお願いに二人は席をたった。
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