第17話

なぜ、こーなった?


思わずひらがなで喋りたくなる。




私の目の前にはキッチンがある


なんで???


頭の上にはクエッションマークがいくつも浮かんでいる気分だ。




「気に入らないかな?」


そう私に問いかけるのは、この大陸の支配者だ。


先日私にキッチンの使用(私は使用許可を求めた)を許してくれた陛下がいる。




「気に入らないなんてとんでもありません。ただ、驚きすぎて… 言葉が出てきません」




そう、私の目の前にはキッチンがある…


私の離れの一部に出来た、間違いなく私の離れにキッチンが出来たのだ。


追加でキッチンを作られたのだ。


これを驚かずに何を驚くと言うのか…




私は言葉がない。




「てっきり、離れのキッチンを自由に使わせて頂けるものと思っていました」


「私は吝嗇家ではないぞ」


やや不満そうに陛下がおっしゃった。




…そうですね、大陸の支配者はそんなケチでは無いと思います。


でも、それとキッチンを作るのとでは話が違うかと…


私の考えが庶民なのかな…




私は呆然としたままキッチンを見回した。




「まぁ、姫の離れに作るから簡易的なものしか用意はしてないが、そこは妥協してもらえるかな?」




簡易的? これが?




私の目の前には前の生活で言うところのシステムキッチンがあった。




もちろん、電気も機械も無いので食洗機やレンジはないが、オーブンもあるし、食器棚やパントリー、冷蔵庫代わりの保冷庫もある。


もちろん、水道はないが代わりに水が常時流れていて、井戸に水を汲みに行く必要は無い様になっていた。簡易的な水道だと思える。


もちろん、ダイニングもある。


わかりやすく言えばカウンターキッチンだ。




陛下が黙り込んだ私を覗き込んだ。


「気に入らないかな?」


黙っているから気に入らないと思われたのだろうか? 


これを気に入らないと言うほど私は罰当たりではない。むしろ、申し訳ないレベルだ。




私は細く息を吐き出す。 


「陛下、このキッチンに不満があるはずはありません。立派すぎて驚いているのです。私が使うのはもったいないくらい立派なものです。私に使わせていただいてよろしいのですか?」


「姫のために作らせたのだ。姫が使わなかったら、それこそもったいないだろう?」


何を言うんだ、と言わんばかりの陛下の態度である。


私はもう一度、同じことを考えた。


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