第18話
私の頭の中はパニックを起こしているらしい
どーしてこうなった? がグルグルしている。
しかし、過ぎたことを考えても仕方がない。目の前には出来上がったキッチンがあるし、作ってくれた陛下がいる。
ここで、お礼を言えない人間は駄目な部類だろう。
「改めまして、ありがとうございます。陛下。申し訳ありません。予想外の事と立派すぎるキッチンに驚きすぎてしまったようです。」
裾をつまみ、礼をしながら感謝の言葉を述べる。
「そうか、姫でも驚く事があるのだな。気に入ってくれたのなら良かった」
陛下が笑顔を見せる。
私でも驚く?どういう事?
ちょっと不思議な言葉があったがそこは気にしないことにした。
このキッチンに集中する。
なにせ、前の生活では夢にまで見たシステムキッチンだ。それが目の前にある。テンションが上がらないわけがない。
「気に入らない筈はありません。オーブンもあるし、水道も一緒にある、憧れのカウンターキッチンだし。ダイニングテーブルも大きいし、アイランドキッチンとはいかないけど、別に小さな作業台もあるし、料理をする人でこれを喜ばない筈がない。」
私はキッチンを振り返りながら力説する
「水道? アイランドキッチン? カウンターキッチン? 姫?」
私は陛下の呟きを聞き逃さなかった。
あ、興奮してやらかした。
こっちには(今の世界には)水道とか、アイランドキッチンとか言葉がなかったんだった…
やらかした私は思わず陛下を振り返り、ちょっと見つめ合ってしまう。
私は苦笑いしか、出てこない。
無言の陛下と見つめ合う
これは何度目だろう…
それだけ、私がやらかした証拠だ。
「水道とは?アイランドキッチンとは何かな?」
陛下は苦笑いの私を見逃してくれる気はないようだ、しっかりと追求がくる。
私はニッコリと笑った
陛下が虚を突かれたように驚いていた。
笑いかけられるとは思っていなかったのだろう。
「申し訳ありませんわ陛下。陛下がご存知の筈はありません。私が思いついた言葉ですの。」
「姫が?」
「ええ、だって水の道にしか見えませんでしょう?」
私は水道を指し示しながら言い切った。
私が指した水の道はゆっくりと静かに流れている。
「なるほど、確かにな」
陛下は納得してくれたようなので、ホッとできると思ったらまだ早かったようだ。
「では、アイランドキッチンとは?また、姫の作った言葉なのかな?」
「ええ、そうです」
私は微笑みを絶やさぬように気をつけながら頷く。陛下から作ったと言われたので、そこに全力で乗っかる事にした。
「なるほど、姫が造った言葉か… どんな意味があるのかな?」
「ありませんわ、何となく出てきた言葉ですもの、自分でもわかりません」
私ははっきり、きっぱりと言いきった。
ここで下手に誤魔化すと後が面倒になる。
そして、私はいろいろと襤褸を出しているので安全策を取りたい。
その結果、『ありません』に行き着いた。
「そうかな?私の勘だが何かありそうな気がするが…」
陛下の追求の手は止むことがない。しかし、ここで負けるわけにはいかない。
一つ失敗すると次々と襤褸が出ることが考えられる。
私は嘘をつくとばれるが、今回は嘘はついていない。本当の事を言っていないだけだ。
なぜなら、アイランドはこの大陸の言葉ではない。というとは、私が考えた、といっても過言ではないだろう。 これは詭弁だが私はそれで自分に納得をさせた。
でなければ私の言葉は陛下には見破られるだろう。
なので私は造語と否定する。あまり強調しすぎても疑われるのでほどほどが肝心だ。
私はニコニコしながら
「そうですか?そんなことはないんですけどね」
穏やかに言いきった。
陛下は疑わしいと思っているようだがそれ以上の追求はなかった。
ただ、思わぬ方向から話がきた。
「で、姫。このキッチンで何を作るのかな? 私は何が出来るか楽しみにしているのだが」
「えっ?」
どういう意味?
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