第42話

試験運用の内容が少し変わったので運用期間が延びることになった。


これで宿屋の持ち出しが増えることになる。このプランが上手くいかなかった時が心配だ。今はやってみよう、で動かしているが駄目だった時の腹案も検討しておこう。




変更点を決めた帰り道、検討事項を考えているときに気が付いた。プラン変更をおじさんに話していない。確かにおばさんの了承をとれたが、私の契約相手はおじさんだ。契約相手を間違えていいけない。


わたしは回れ右をして宿屋に帰る。


帰ると言っていた私が戻ってきたのでおばさんが驚いていた。


「どうしたの? パルちゃん。帰ったじゃないの?」


「おじさんに変更を伝えることを忘れていて」


おばさんに戻った理由を説明すると呆れていたが、おじさんを呼んでくれた。おばさんと二人で変更の説明をして了承をもらう。


その事にほっとして改めて家路につく。




翌日は学校がある。今日はリサと話をするつもりだ。


私は早めに学校に行き。リサを待ち伏せる。リサを待っているとあまり待つことは無くリサが来るのが見えた。リサはわたしに気が付いていないようだ。それを良い事にわたしから話しかける。




「おはよう。リサ」


「パル。・・・おはよう」


わたしに驚いたようだが、少し躊躇って挨拶が返ってくる。躊躇いがあるという事はわたしに何か言いたいことがあるはずだ。


わたしもどこから話せばいいのか分からないので、何となく黙ってしまう。二人でお見合いのように見合っていると、その横を他の友人たちが通り過ぎて行く。




「おばさんから、話を聞いた?」


「なんの話? お母さんから何も聞いていないけど? わたしに話をする事なんてないって知っているでしょう?」


「そう」


そんな事はないよって、気軽にいう事は出来なかった。残念だけどリサのいう事は事実だからだ。あの家でリサは浮いている感じがする。子供だからと、何も教えていない事もあるけど。それだけではないような感じがするのだ。その事も含めてリサの気持ちと考えを聞いておきたいと思ったのだ。


教室に向かいながらリサに考えを聞く。本当ならゆっくり話を聞きたいのだが早めに聞いておかないとリサから話を聞くことは出来ないと感じたからだ。


私の問いかけにリサは予想していたのか、感情の揺れは見せずに頷いた。


「パル。今日一緒に帰ろうよ。ウチに来るの?」


「今は試験運用機関だから、5日間はお邪魔しないよ」


「そうなんだ。わたし、そんな事も教えてもらえないんだよね」


ポツリとリサが呟く。


本当に淋しい、心細そうな感じの呟きだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る