第34話

わたしは自分の無力感と説得力のなさに肩が落ちる。リサをがっかりさせ、怒らせてしまった事に自分が思ったよりも重たい気持ちにさせられていた。こんなに感情に左右されるとは思っていなかった。だが、自分の事にかまけている暇はない。依頼を終わらせなければ時間がかかりすぎだ。上手くいくかは別にして何らかの形を作らなければならない。リサの信用を無くしたのにさらにご両親の信用まで無くすのはごめんだ。


わたしは気持ちを切り替えるように努めながら、部屋の配置を相談するべくおばさんが仕事をしている受付へと向かう。




「おばさん。少し相談してもいいですか?」


受付におばさんがいて仕事をしていたので声を掛ける。わたしのアイデアを聞いてもらうためだ。おばさんも待っていてくれたようだ。何も言わずに了承してくれる。わたしはそれに安心しながら話を始める。おじさん達を待たなくてよいか一瞬迷ったが、おばさんが何も言わないので問題ないのだろう。わたしはそれに安心して今回の目的を話す。




「おばさん。一階を見せてもらいました。荷物を移動してスペースを作りたいと思います。階段下に小さいスペースがあったのでそこに掃除道具を移動させて、前に掃除道具を置いていた場所にリネン類を置ければいいと思うんですけど。どうでしょうか?」


「掃除道具を置いている場所に入るかな?」


「そこは工夫次第だと思います。棚なんかを工夫して高さもありますしあるものを使えば何とかなると思います。リネンの場所をシャワースペースみたいに使えば水場の近くだし、洗濯も取り込みも簡単だと思います。掃除の水を用意するのだけは大変だと思いますけど、他の部分が楽になるのでそこは目を瞑って欲しいです」


「そうだね、移動させれば大丈夫かもね」


おばさんも同意してくれるようだ。おばさんが同意すればこの話は決まったも同然だ。おじさんとお兄さんが反対するとは思えない。おばさんも話が進んだのか安心したようだ。機嫌が良いように見えるのでリサの話を持ち掛けることにする。


「おばさん。荷物の移動なんかは明日になりますよね?もうお客様が来る時間ですし」


「それしかないわね。でも階段下の掃除や移動できるのは少しずつ始めておくわ。明日が楽になるしね」


ごもっとも。わたしのその意見には同意が出来る。できることは出来るうちにしておいた方が助かるというものだ。その意見に頷きつつ先の話を覗かせてみる。


「本格的な移動は明日になると思いますけど、わたしも来てもいいですか?」


「手伝ってくれるの?でも、毎日じゃおうちの人に叱られるんじゃない?」


「大丈夫です。時間に帰れば問題ないので」


「おうちのお手伝いはないの?」


「帰ってからしてるから大丈夫ですよ」


「ならお願いしようかしら。移動した後の位置とかも相談できた方安心だしね」


「はい。じゃあ、明日も伺いますね」


「お願いね」


始めは心配そうにしていたおばさんも少しは安心したようだ。以前よりも笑顔が増えている。声も穏やかさがあるような気がする。わたしはその違いに気持ちの持ちようは大事なのだと再認識させれた。そう思うとリサも安心させてあげたいと思う。切実に。


「明日はリサにも手伝ってもらうんですよね?」


「もちろんよ。皆でするわ。あの子だけ遊んでいる暇なんかはないわ。パルちゃんにも手伝ってもらうのに」


その言葉にわたしも頷く。ここからが正念場だ。話の持っていき方が大事になる。おじさんがダメならおばさんを攻めてみようプランだ。同性だから話したら理解をしてもらえるかしれない、という希望的観測もある。


「おばさん。詳しい話は別にして大まかな話はリサにもしていいですか?」


「どういう事?」


おばさんの片眉が上がるのが見えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る