第14話

わたしは部屋に戻ると今日の事を振り返っていた。


まさか軽口で話したことから、宿屋の経営改善の話に繋がるとは、思ってもいなかった。




わたしは深呼吸をする。


今日の提案をおじさんはどう思っただろうか。わたしとしては普通の事を提案したつもりだが、おじさんは凄くビックリしていた。思ってもないことを言われたような様子だった。受け入れてもらえるだろうか。それに家族にもリサーチしてもらえるかな?それにその話を聞いたリサは、自分の家の状況をどう思うだろうか。


なんか心配な事ばかりだ。


それとも初めてだからいろいろ考えてしまうのだろうか。今までコンサルティングなんてしたことないから、これで良いのかもわからないし、仕事として家族の事まで考えるものなのか、それともわたしはリサと友達だから家族の気持ちまで考えてしまうのか。


わからなすぎてグルグルしている。




わたしはベッドの上に寝転がる。




「上手くいくかな?おじさんはちゃんとしてくれるかな?」


明後日の夕方には行くと約束したが、大丈夫だろうか?




不安が多いせいかマイナス思考だ。


自分の気持ちではないから、どんなに考えたって結果が出るはずがない。




まとまらない事を考えるのはやめにして、私は夕食を作るのを手伝うことにした。こんな時は別な事を始める方が建設的だと判断したからだ。




翌日、学校に行くとリサがドンヨリとしていた。重たいものを背負っているかのように、背中が丸まっている。おじさんはリサ達にも話をしたのだろう。そっとリサに近づき声をかける。




「おはよう。リサ。おじさんから聞いた?」


何をと言わずとも伝わるだろう。予想通り黙って頷かれた。


「うん。いろんな事を聞かれたよ」


「そっか。明後日の帰りに寄らせてもらう事になってるけど、早いほうが良さそう?」


「うん、明後日だよね?聞いてる。明後日がいいと思う。なんか。ね」




リサの話し方は中途半端だった。どう話して良いのかわからない感じだ。これを追求するのは良くない気がしたが、心配だったわたしは話を聞こうとすると、先生が入って来た。


なんてタイミングの悪い。授業の前だから仕方がないのかも知れないが、後ろ髪を引かれる思いで席についた。


学校にいる間はリサと話すタイミングはなかった。他の友達もいるしその人たちの前でリサの家の話をするわけにはいかないからだ。家族の話しはデリケートな内容だ。誰でも知っていい内容とは思わない。わたしだって勝手に自分の家の事を話されたら嫌な物だ。そこは気を使うべきだと思っている。


リサはおじさんから明後日と聞いているみたいだ。だったら予定通り明後日でいいだろう。


わたしはそう決めると学校を後にした。




帰り道、明日のシュミレーションをする。


やはり明日は家族の人たちにも状況を確認して、わたしの提案も聞いてもらうのが良いと思う。


宿屋の経営改善はおじさん一人でするものではないし、家族の人たちの納得も必要なはずだし、何をするにしても家族の協力は必要不可欠なはずだ。


わたしは結論を出すと本格的に家に向かう。考え事をしていたせいか足の動きは遅かったのは仕方がないだろう。昨日は遅く帰ったので今日は早く帰れば何かを言われることはないはずだ。


わたしは明日のために今日は約束を守ったよと、父にアピールするために『ただいま』を言うためにお店に顔をだす事にした。

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