ずっと一緒だからこそ

@hi-a21

泣き顔と笑顔

「ただいまー」


「おかえりー」


俺、永井隼人はただいま、恋人である橘華鈴と同棲している部屋に帰宅した。


「隼人はもうご飯食べてきたよね?」


「おう。お前いいもん食ってんなー」


俺は華鈴が食べている赤いきつねを目で追いながら言う。


「そういう隼人は取引先とたらふくたっかいやつ食べてきたんでしょ」


ベーっと舌を出しながら不満を伝えてくる。

それでも俺は、ああ、空元気だな、と。


華鈴がインスタント麺を食べている時は、だいたい何かトラブルだったり、いざこざだったりに巻き込まれている時で、沈んでいるときだ。

こういうことはよくあった。

華鈴は小さいころから親が共働き家庭で夕飯は一人でとることが多かった。

次第に大きくなり、自分でご飯を作るようになってからは、さっきみたいに何かあるとご飯の支度をやめ、できものを食べた。

それに気が付いたのは大学生になり、同棲を始めてからだったが。


しかし社会人になってからというもの明らかにその回数が増えた。

華鈴が入った企業は世にいうブラック企業だった。

きっとストレスも大きいはずだ。


「今日は仕事どうだった?」


まだうどんをすすっている華鈴の向かい側に座り、それとなく聞いてみる。


「隼人のソレって確信犯だよね。何かあったらすぐばれちゃうもん」


ばれてた。


「付き合い長いからだろ」


「すねちゃってー。ほんとは私のこと大好きなくせに」


なに言ってんだ。と、一蹴しようとしたができなかった。

ふざけながら零した言葉の後には明るい雰囲気は残っていなかった。


「…ほんと、社畜やめたい」


「じゃあやめればよくね?」


「そんな簡単に言わないでよ」


「じゃあ簡単に言ってないよってこと教えてあげるからちょっと待ってて」


そういった俺は席を離れ、自室の引き出しからあるものを取り出した。

ずっとタイミングを計っていたが、今だと、思った。


「左手、出して」


「なんで?」


「いいから」


「あ、これってもしかしてプロポーズですか?」


また軽口が叩けるようにはなったらしい。


「そうだけど」


「え。ちょ、うそでしょ?」


「嘘じゃない。

俺と結婚しよ。

で、社畜やめよ」


「こんなの、聞いてないっ」


華鈴は涙を流しながら必死に言葉を紡いでくれている。

少なくとも喜んではもらえたようでほっと胸をなでおろす。

さすがに緊張した。


「そりゃ言ってなかったから。てか俺がいう前に先回りするなよな。カッコつかねえから」


「私で、いいの…?」


「華鈴がいいの」


「っっっ!

 これからもよろしくお願いします」


「こちらこそよろしくお願いします」


やっぱり、

空元気の華鈴より、

落ち込んでる華鈴より、

目元の赤い華鈴より、


笑顔でいる華鈴が一番良い。














































































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