第20話 美人なんだけどなぁ
「ピ、ギ、ギャッ?」
「やばっ!」
モンスターハウス発生装置が設置されて直ぐにゴブリンが産み出された。
このままじゃ俺がスタンピードの発生源とか言われかねん!
えーっととにかくアイテム欄アイテム欄アイテム欄……あった!モンスターハウス発生装置っ!
『設置・解除』
俺はモンスターハウス発生装置を選択して解除ボタンを押した。
これで一先ずは安心――
「きゃっ!」
「「ギギャッ!」」
「えっ?」
既に産まれてしまっていた3匹のゴブリンはモンスターハウス発生装置を解除しても消えず、女性に襲いかかっていた。
女性は戦闘が本当に苦手なようで、ゴブリンは好き放題。
俺が目を離したのは一瞬なのに、もう服もズボンも破かれて黒くて細かい刺繍の入ったセクシーな下着が丸見えに……。
「あっ……」
なんか満更でもない表情なのは気になるけど、とにかくゴブリンの奴ら胸とか脚とか揉んだりしやがって……羨まけしからん!
「天誅っ!」
「ギッ――」
――パーンッ!
女性に意識が向いているゴブリンなんてハエを潰すよりも簡単だ。
「え? 嘘っ……」
「……あのこれ、小さいかもですけど、使ってください」
「あ、ありがとうございます。――はい、ありがとうごぞいました」
アイテム欄から大きめのタオルを取り出して女性に手渡すと、ゴブリンの血飛沫で汚れた顔を拭って返された。
いやいやいや下着隠さないんかいっ!
照れるどころか堂々としてるのなんでぇ……。
「その、見えてますけど……」
「大丈夫です。私替えは持ち歩いてるので。それより今のはなんだったんですか? ゴブリンがいきなり、出てきて、それでそれでそのゴブリン一撃で倒しちゃうなんて!」
「えっとこれはですね……いやその前に着替えて下さい今は周りに俺しかいないんで――」
「着替えるよりも先にそれを教えてくださいよ! もしかして何か秘密が? 秘密だとしてもそこをなんとかお願いします! なんなら下着を脱ぎましょうか?」
「言いますっ! 言いますから! 服着替えてくれたら全部言いますからっ!」
「……なら着替えます。男性なのに変わった人ですね」
俺がその扱いになるのっ!?
顔は美人だけど、この人ヤバいよぉ。
◇
「――っという事なんです」
「レベル10でダンジョン踏破にモンスターハウス発生の装置、自分だけのダンジョン、煙はあなたの魔法攻撃によるもの……」
「はは、まぁ信じられないですよね」
俺が現在話せる事を全て話すと、女性は考え込むように俯いた。
多分反応に困ってるんだろうな。
「多分大丈夫だと思うんですけど、あんまり広まると引き抜きとか、妬みで店に嫌がらせとか、そういう可能性も出てくるかもなので一応内緒にしてもらう事は出来ますか?」
「それは会社にも報告してはいけないって事ですよね」
「そう……なりますね。嘘をつくのは気が引けるかもしれませんが、さっき投稿したのと同じように俺の事も報告して頂けたらと……」
「分かりました。という事はこれを活かせるのは私だけ……。素材の山に囲まれる事が出来るのも、それで一儲け出来るのも私だけ……。ただ問題は……」
今度はぶつぶつ呟く女性。
これ話しかけてもいいのかな?
「あ、あのぉ――」
「そのコボルトの素材って今どうやって処理してますか?」
「取り置く事もありますけど、血を落としたり処理が大変なので……最近は捨ててますね」
「どこかの店や企業に流したりはしてないんですね?」
「してないですね。……。そっかゴブリンは目が高く売れるしコボルトの毛皮も――」
盲点だった。
金策には肉を売るしかないと思い込んでしまってたけど、沢山余ってる素材を売ってしまえばいいじゃないか。
忙しすぎてこんな単純で簡単な事を見落としてたなんて。
そういえば、コボルトの素材と魔石で防具とかも作らないと。
今日みたいに服が焼けてまた大惨事になったら大変だ。
「その……私、そういったものを高く買い取ってくれるような方々を知っていてですね……良かったら、えっと、その方々を紹介します。ですから私が改めてあなたの勤める店を訪れるまで、今ある素材を売ってしまうのは待って頂けませんか?」
「まぁ店長も景さんも俺も、多分小鳥遊君達もそういうのには疎いと思うので……分かりました。店長には知り合いで素材販売に精通してる人がいるって伝えておきます。いやぁそれにしても自分の会社の事じゃないのにそんな提案をしてもらって……本当に助かります」
「いやまあ、このダンジョンに潜る必要を無くしてくれましたし、これくらいはさせてください……」
頭を掻きながら照れるようにありがたい言葉をくれる女性。
ヤバいけどやっぱりいい人なんだろうな。
「そうだ、俺は宮下要って言います。その時は頼りにさせてください」
「はい勿論です。私は一之瀬雅(いちのせみやび)、っで連絡先の交換いいですか?」
「みや――」
「どうかしましたか?」
「いえ、なんでもありません。さっと交換しちゃいましょう」
俺は上品な名前とは裏腹に下ネタ特攻型の雅さんと連絡先を交換すると、軽く会釈をして足早に帰路に着いたのだった。
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