記録:私、とある1日2
寸前まで見ていた夢が面白くない。楽しくないのだ。
まだ身体は眠りを欲していたが、もう夢は結構でございます。
もぞもぞと毛布から這い出す。
現実に期待はなかったが、絶望もなかったのででろんとまろびでた。
光が瞬いている。
いつの間にやら雲まみれだ。
口の橋についていた雲片を拭う。
あっまい。
欲望ダダ漏れでスイーツ天国にいましたか。
もそもそと簡易に服を羽織り、朝のルーティンをこなしてゆく。
何にも起こらなそうで、やっぱり起こりそうなことがぐるぐると渦巻いてさざめいてる予感。
最後の仕上げにうーんと伸びをして、くにゃり、と身体の力を抜く。よし。今日もほにゃりといこー。
リビングへ移動するとせんがこたつ布団に入ってグラスで音楽を聴いている。ほやほやしてるのかな、と思ったら、どうやら発作に耐えているようだった。
うんうんしている。小刻みに身体を揺らして苦しみと闘っているのだ。
にっひっひ。
楽しい?
苦しいを楽しんどるよ。
それはそれは。
軽くスルーして猫っちの餌やりに向かう。
軒下をくぐると、昨日はさあっと雨だったようで、雨上がりの匂いが鼻をついた。
大気の唸りが腹の底に響く。
ひねりのゆえに屁をこいた。
気の抜けたサイダー状態。
これはぬこに、ぬこに充電してもらわねば!
まだ猫のミーヤはお休み中だった。
涎を垂らして弛緩したニヤケヅラをしている。
屈んでふにふに指でつつく。
至福の極み?
いやいや、起こそう。
なでなでしてやると、ふあぁ〜あ、とあくび、細く目を開く。
なぁーご。
かわいいのう、かわいいのう
さわさわしながら餌やりします。
何も邪気のない、美味しそうな食いっぷり。
思う存分堪能させてもらい、引き際、気ままなのを見てとって、外の空気を吸いに出る。
空のアリーナだ。
そう呼んでるだけで、そう見えるだけの建造物だったが、私はここを気に入っている。
住処をわざわざ引っ越したのも、ここの景観が気に入ったからだ。
雲が、ひしめいているのだ。
次から次へとひっきりなしに雲が押し寄せている。
うねうねうねりが万象の変わりようをこれでもかと描ききっていく。
不定形でたよりげなさそうなのに存在がどっしりしているので、ホッとできる。
空気感がハンパない。
奥底からゾワって飛び上がるほど押し上げてくる。
雲はほとんどが水の無機物にしかすぎない。
それなのに、これほどまでに感情に訴えるのは、なんのなしにでもどこかに続いてくれているからだろう。
いつまで眺めていても飽きないのだが、好きなだけでは済まされない要素が潜んでいると常々思っている。
自由さも駆け抜けている。
それだけでワクワクしてしまう。
どこまでも想像が止まらない。
小石をひとつ、蹴り入れた。
中を抜けてゆく自分を透き通らせた。
透き通って、透徹したかったが、できたろうか。
せんが呼んでる。
今日もいつもだ、空気がうまい。
知らず知らずのうちに、心のうちでリズムをとり、見えない広がりに元気よくぐんぐんと胸弾ませ、鼻歌を口ずさんでいた。
ささやかな嬉しみと高まりの。
いつもよりも歩みが軽やかで浸っていた予感が明日に微笑みかけていた。
そうだ、外でこの景色を肴に食事といこうか。
雲の切れ間にどうしたことか虹を見た気がした。
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