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「この辺には似合わない人だね」
フミちゃんがギョーザと缶ビールの入ったビニール袋を提げて事務所に入ってきた。
「仕事なの」
「まあね」
フミちゃんはテーブルに置いてあった写真をわきによけて裏返しにした後、ギョーザの入ったパックと缶ビールをテーブルに並べた。
「お酢だけでいいんだよね」
「イベントは行かなかったの」
「一人で行ってもね」
「一人ってわけでもないんじゃない」
「まあ、行けば誰かに会うだろうけど」
フミちゃんは流しのほうに歩いていく。
「キャベツはちゃんと仕入れたし」
「きれいに片付いてるね」
「今のところはね」
「あたしも食べていい」
「そのつもりでしょ」
フミちゃんは酢の入った小皿を持って戻ってくる。
「店のほうは大丈夫なの」
「休憩時間だから」
「フミちゃんが決めるの」
「そうだよ」
「誰もフミちゃんには逆らえないか」
僕は裏返しになっていた写真をテーブルから取ってデスクのほうに歩いていく。
「どんな仕事なの」缶ビールの開く音がする。
「わかってるよね」
僕は写真をデスクの引き出しに放り込んだ。
「わかってる。守秘義務でしょう。聞いてみただけ」
「でも、助手ならいいんでしょう」
「助手がいるほどの依頼はないから」
「今度の依頼も」
僕は答えずにギョーザを口に入れる。
「やっぱり、フミちゃんのギョーザは日本一だね」
「世界一だよ」
笑顔全開のフミちゃんを見ながら、僕はグッとビールを流し込む。
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