ワーカーホリック
シヨゥ
第1話
「1か月ぶりに日の光を浴びた気がする」
食事に誘った友人がそんなことを言う。
「夜勤だっけ?」
「いや日勤」
「なら出勤の時に浴びるんじゃないの?」
「冬場だからまだ真っ暗で」
「そんなに朝早いの?」
「始業は9時だけど、最近は6時ぐらいから居るかな。忙しくて」
「業務で外に出ないとしても、昼ぐらいは外に出れるんじゃない」
「昼休みも仕事だよ。食事なんてとっている暇ないよ」
「大変だな。それで仕事が終わるのが終電とか?」
「それはないよ。早くて19時。遅くても22時かな」
「そんなに働いたら死んじゃうって。休みはちゃんと取れているの?」
「毎日3~4時間は寝れているかな。土日はその3~4倍。どうにか持ちこたえている感じ」
「そりゃあ休みの日も半日以上寝ていたら日の光は浴びないか」
「そうそう。今日も呼んでくれて嬉しいんだけどまだ寝たりない感じ」
そう言ってほほ笑むと友人はコーヒーをすする。
「たしかにやつれたもんな」
「そう? カロリーだけはちゃんととっているつもりだけど」
「栄養価も考えないとダメだ。体壊すぞ」
「そうかもね。でもその前に心をダメにしそう」
「そんなにか」
「日に日に寝つきが悪くなっていってね。そろそろ医者に掛かろうかと考え始めているところ」
「一旦休んだら?」
「それも考えるけど、生活がね。あるから」
「生活するお前がダメになったら生活もなにもないだろう」
「それもそうだね」
また友人は微笑みコーヒーをすする。
「まぁお前の人生お前のものだから命令はできないけど、もっと自分を大事にした方がいい」
「それが難しい」
「難しいことを後回しにしていたら取り返しのつかないことになるぞ」
「その時はその時かな」
「アドバイスのし甲斐のない奴だな」
「それは本当にごめん」
「とにかく自分を大事にしろ。日の光を浴びる。それだけでも自分を大事にしていることにつながるからな」
「分かったよ。努力してみる」
「また1か月後、どうなったか呼び出すからな」
「はいはい」
会計を済ませると友人は帰っていく。寝に帰るそうだ。その足元は若干ふらふらとしていて危うい。1か月後また会えればいいが。心配だけだが募るのだった。
ワーカーホリック シヨゥ @Shiyoxu
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