142 ネギ、ニンニク、ゴボウジュース
俺はスライム。消化吸収はお手の物!
そうだよ、草じゃないか。いつも食べてる。
俺はミルグナ草が甘くて好きだ。お高い草のシテンシテン草も好きだ。そういや祭りの時ジミー君に取ってもらったシュギム草も結構おいしかったな。
さあ! お前はどんな味がするんだ?
俺はさっそくグドマラガボスの蔦を消化し始める。
おっ、柔らかい。なんていうか筋張ってないしトロリと溶けるような感じ。
味は……。
残念ながら今一つだな。うまくもないしまずくもない。
でもなんていうか、今一つだけど安心する味っていうの? そんな感じ。
こいつの餌になっている元が俺のスライム細胞だからそんな感じを受けるんだろうか。
引き続き食レポのために消化し続ける俺。
うーむ。先端は柔らかかったけど、根元に近づくにつれて繊維が豊富でシャキシャキして、ネギみたいな感じ。先端と比べて味は若干濃くなった感じかな。
おっ、蔦の真ん中を消化して分かったんだけど、ぶつりとちぎれて本体と切り離された蔦はそれ以上成長しないのね。
まあ、食いちぎる以上に沢山生えてくるからあまり意味はないんだけど。
「なんだい? グドマラガボスの侵食スピードが遅くなってないかい?」
正解です。
今、食べ合いしてるからね。
俺を食べて水分を取り込んで成長するグドマラガボスと、成長するグドマラガボスを食べて再生する俺。
さっきまでは吸われるばかりで受け身だったけど今は違う。
食べた分で接種した栄養+
「見ろ、蔦が減ってきてるぞ!」
うんうん。なんかね食べるコツを掴んだんだよね。
なるべく根元に近い所からぶっちぎって、それからその先を食べるんだ。
そうしてたらだんだんと蔦の生えるスピードを上回ってきて。さらにもっと根元に近い所から食べれるようになって。
「う、うそだよ。こんなバカな事……。グドマラガボスだぞ。聖王国を……一国を滅ぼすほどのグロリアなんだぞ!?」
あ、本体みっけ。
なんだ球根みたいなニンニクみたいなそんなコブじゃないか。でも大きさはバランスボールくらいあるな。
はじめましてグドマラガボスさん。
それではさようなら。いただきます。
俺はデカいニンニク本体を消化にかかる。
ふむふむ。見た目と違って結構フルーティー。溜め込んだ栄養かな。茎や蔦は今一つだったけど本体はそれなりに美味しい。
本体も食われまいと根を伸ばして俺の体を侵食するが、最後のあがきだな。
消化スピードの方が速く、根っこの先端から消化しても十分お釣りが来ている。
つまりはゴボウのような繊維たっぷりジュースが自動で湧き出て来るようなものだ。
いつまでもゴボウジュースを飲んでいても仕方ないのでごっくんして。
そうして俺はフルーティニンニク本体中心部に最後まで残っていた種を消化し終えた。
ごちそうさまでした。
あ、まだデザートが残っていますね。デザートって言うほどおいしくはないけど。
中心部を失い成長がピタリと止まった蔦。まだ結構な数が俺の体に巻き付いている。
俺は別腹と言わんばかりにそれらを残らず消化した。
「こ、この化け物が! い、急いで本国に報告しなければ!」
あっ、ちょっと待て!
忘れものだぞ!
一目散に逃げようとするナフコッド。
俺はむにっと体を伸ばして先ほど体外に射出した帝国兵を掴むと、彼女に向かって投げつけた。
10、20、30。ポイポイポイと投げつけていく。
「くっ、お、お前達、いいようにやられてるんじゃないよ!」
身に着けた
「ぐえっ!」
60、70、80辺り投げたところで
別に倒すために投げたわけじゃないんだが、まあ今まで散々やってくれたから最後まで投げておくか。
フラフラと飛ぶナフコッドに残っていた帝国兵とグロリアを投げつけて……全弾命中したナフコッドは地面に落下した。
ぶにょりぶにょりと倒れたナフコッドににじり寄る俺。
うん。どうやら完全に気絶しているようだ。
白目をむいてるナフコッドの顔をじーっと見つめる。
さて、こいつらをどうするかなんだが……。
ここに放置しておくわけにはいかない。クシャーナの人達も扱いに困るだろうからな。
ルーナシアに連れ帰るか? いやいやここからルーナシアまでは距離があるし、何分面倒くさい。
今イングヴァイト国内にいるからイングヴァイトに引き渡す手もあるが、それも面倒くさい事になりそうだ。なんせ俺達は不法入国した体になっているからなぁ……。
帝国にお帰りいただく事にするか。
俺の力を見せつけた事だし、そうそうクシャーナに手出しはしないだろう。じきにクシャーナは秘匿結界によって外から干渉できなくなる。そうすれば心配も無くなるしな。
そうとなったら、と。
俺は墜落してぱっくりと貝殻を開いているオーロラシェルを見る。
ちょいと狭いかもしれないけど詰め込んだら全員乗れるだろうと思い、ナフコッド他、帝国兵をオーロラシェルの中に放り込んでいった。
彼らのグロリアは定員オーバーするのでクラテルの中に戻ってもらっている。
全員を詰め込んで貝の殻を閉じる。
今からこいつを撃ち出してダグラード山脈を挟んだ向こう側、つまり帝国へと送り返すのだ。並のグロリアなら上空の乱気流に耐えられないけど強固な貝殻をもつオーロラシェルなら問題ない。
先ほど割ってしまった殻をスライム細胞で覆って修復して、途中で殻が開いてしまったらこまるのできちんと糊付けして開かないようにしておいた。糊は1日経ったら消えて無くなるので無害だよ。
そうしてそのオレンジ色の巨体を俺の体内に取り込む。
本当に俺の体って大きくなったな。こんなデカいものも丸呑みできるなんて。
やろうと思えばこのクシャーナも丸呑みできるかもな。
俺は体を大砲のような形状に変形させる。
この状態で核爆発ならぬスライム爆発を起こした威力で撃ちだすのだ。
以前にレナが悪い大臣に捕まって謎の仮面お姉ちゃんリリアンと共闘した時もスライム大砲を名乗ったが、あれは人力のスリングショットタイプだった。今回は本物の大砲だ!
でわでわ。
この後レナ達をコンクリから救出しないといけないので時間はかけてられない。
ガルガド帝国の皆様お疲れさまでした。これに懲りたらグロリアを悪い事に使わないでいただきたい。さようなら!
こもるような爆音と共に巨大な貝グロリアが撃ちだされ、瞬く間に感知範囲から消えて行った。
数分後には帝国内に
勝利だ!
「かーっ、お前のスライムすげーな。流石の俺も驚いた」
「今更気づいたんですかウルガー様。スーはウルトラスーパー強くて可愛いスライムなんですよ?」
ふふふ、レナはそんな俺の
皆が勝利の余韻に浸りながら、コンクリ除去などの事後処理を行って村への帰路へとついたのだった。
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