男だった僕が、貴族少女になりました。
レイド
第1話
事の始まりは、突然やって来た訳で……
今の僕の状況を一言で言うと……縛られている状態だった。
猿轡を付けられて、目隠しをされてしまっているので、周りの状況が良く解らなかった。近くから、声が聞こえて来る。
「おい、やっちまったんじゃねーだろうな?」
「大人しくなったからな……もしかしたら、やっちまったかもしれん」
「どーすんだよ、殺しちまったら、金を受け取れねーじゃねーか!」
「待て、確認してみる」
そんな声が聞こえて、体を触られている感触がした。
何と言うか……凄く気持ちが悪い。何で僕がこんな目に逢わなければいけないんだろう……って思ってしまった。こうなる状況を良く思い出してみる。
確か僕は……好きな子に告白する為に、待ち合わせ場所に向かっていたんだっけ……好きですと告白して、両思いになれたら……と思っていたら、気がつけばこんな状況になってしまっていると言う事。覚えているのは、体が吹っ飛ばされて、意識が無くなったと言う事だけど……多分と言うか、車かなんかに轢かれちゃったのかな……僕……で……なんか……男二人の声が聞こえたし、男の僕なんか縛って何の得があるんだろう……って思ってしまった。
そう思っていると
「大丈夫だ、とりあえず……死んではいない」
「そりゃあ、良かったぜ、それにしても……ほんと上玉だよな?」
「ああ、身なりからしていいとこのお嬢様だぜ? こりゃあ……親から身代金をたっぷり手に入れる事が出来るかもな」
「おお、楽しみだぜ」
そう聞こえてきて、まず可笑しい事に気がついた。
この男達は、僕の事をお嬢様とか言っていると言う事。
これはどう言う事なんだろ……? だって僕は男なのに……少なくともお嬢様では無い筈……鏡とかで確認出来るなら、自分の姿を見てみたいけど、目隠しされているし、体が縛られていて全く動かす事が出来ないし、口も塞がれているので、喋ろうとしても、うーうー言うだけだった。
僕……一体どうなっちゃうんだろ……この先どうなるかが全く解らないので、かなり不安になってしまい、涙が出そうになっていると、物音が聞こえて
「何だ!」
そう男が叫ぶと、ガシャーンと何かが割れる音が聞こえて、打撲音とうぎゃとか、ぐへぇとか聞こえてきたと思ったら、静かになった。
一体何があったんだろう……と思っていると
「もう大丈夫ですよ、お嬢様……さあ、お家に戻りましょう」
そう聞こえてきて、目隠しと猿轡が外されて、僕の目の前に現れたのは
赤い髪をしていて、メイド服を着たメイドさんだった。
「……お嬢様……? 僕が……?」
「お嬢様……よほど怖い目に遭われたのですね、でもご安心下さい、悪党は私がしっかりと成敗したので、お嬢様、自分の名前が解りますか?」
「……ううん」
「そうですか……では改めて自己紹介致しますね? 私はジラード家にお使えしている専属メイド、マリエス・ホランです。 お嬢様はジラード家のご息女、エリスお嬢様ですよ」
「エリス……」
それが今の僕の名前……
じゃあ、僕はそのエリスと言うお嬢様になってしまったと言う事?と言う事は……元のエリスちゃんはどうなったんだと思ったけど、もしかして……さっきの悪党が「やっちまったかもしれん」とか言っていたから、その時に死んじゃって、僕がこの子の体の中に転生?みたいな感じになったのかも知れなかった。
じゃあ……元の体に戻る方法だけど、全く解らないと言う訳で……
けど、一人じゃ何も出来そうにないし、僕には今の所、マリエスと言う味方がいるから、マリエスに従う事が得策なのかも知れなかったので
「えっと……マリエスさんでいいのかな……」
「お嬢様、私の事は気軽にマリエスで結構ですよ?」
「そ、そう……じゃあ、マリエス……僕は一体どうしてこんな事に……?」
「それはですね……お嬢様と奥様がグランド城下町で探索中、お嬢様があの男二人に誘拐されたんです、その報せを聞きつけた私は、情報を集めて、お嬢様の場所を突き止めて、突入した訳です、お嬢様? 今回は間に合ったから良かったですけど、このような事は二度と無いようにお願いしますね?」
「う、うん……気をつける」
「では、行きましょうか? お嬢様」
「う、うん」
マリエスがそう言うので、マリエスについて行く事にして、エリスとしての、生活が始まったのでした。
男だった僕が、どうやら……女の子になってしまったと言う訳で、あと、メイドのマリエスさんが言うには、お嬢様だと言う事だった。
「お嬢様、では、お屋敷に戻りましょうか?」
そう言ってきたのは、僕が最初に出会ったメイドのマリエスさんだった。
マリエスさんに手を握られて、エリスちゃんは誘拐されてたようなので、誘拐されていた建物から外に出る。外に出て思った事は、はっきり言って、ゲームとかに出てくる、RPG風な感じがした。鏡があったので、自分の姿をやっと確認する事が出来た。驚いた事は、まず身長、百六十五センチはあった僕の身長が、どう見たって百三十センチぐらいしかなく、どうみても子供の姿だった。
しかも髪の色が金髪で、はっきり言うと、美少女に見える。
うん、金髪はまだいい、そしてもっと重要な事を言うと、体を自分で触ってみて、確信したのが、男だった僕が、女の子になっている事だった。
冷静に考えて、出した結論は、交通事故かなんかにあって、精神がこの子の体に入った見たいらしい。あと、この子の本来の意識は、あの悪党二人組に殺されたと言う事で……じゃあ、この子が死んで、僕の意識がこの子の体の中に入っちゃったと言う事だった。それに多分と言うか、この世界は異世界何だと思う。
だって、日本じゃ考えられないし。
じゃあ、元の体に戻るには……と考えるのだけど、どう考えたって無理そうだった。
だって、元の意識は死んじゃっているし、僕の元の体も交通事故にあってるから、そのままって感じかもだし……元に戻る方法とかも全く解らないし……確かこう言うのって、神様とかにあったりするじゃなかったかなあ?僕が読んだ事がある物語だとそんな感じなんだけど。とりあえず、最初にやる事は、情報収集とこの体で何が出来るか? をやるしかないかな……と思う事に決めた。
まず、マリエスと一緒に街の中を歩いてみる。
街の外観は、僕がいた町、マンションやらアパートやら一軒家が沢山あった賑やかな街並みではなく、何というか……ファンタジーにありがちなお城がぽつんとあったり、そのお城を中心に市場や家が建てられている。
僕達は、多分城下町と思われる街の中を移動しているので、移動しながら何があるか、確認する事にした。お店の名前が読めるので、どうやら文字に関しては大丈夫な感じだった。ちなみに見つけたお店は、武器屋、宿屋、道具屋で、この三つのお店があると言う事は、日本じゃ禁止されてる武器を所持する事が出来て、それを装備しても何も言われないと言う事で、と言う事は、この世界には武器を使って攻撃を与えて倒される、魔物? がいるんじゃないか? と思う。
うん……ハッキリ言って、ぶっそうな世界に迷い込んじゃったんだ……と思い、魔物に襲われたら一撃で死ぬんじゃないか? と思ってしまった。
そう思っていると
「エリス! 良かった!」
そう言ってきて、僕に抱きついて来た者がいた。
抱きついて来た者は、ニ十代ぐらいの金髪の女性で、結構な美人さんだった。
僕の事をエリスと言っていたので、この人は多分……この子の母親なんじゃないかな? と思う。
「エリス、怪我はしてない? 誘拐されたと聞いて、心配したのよ?」
そう言って来たので、僕は
「何とか大丈夫……マリエスが助けに来てくれたから……」
そう言うと
「マリエスが?」
「はい、危ない所でしたが、お嬢様は無事ですよ」
「そう……エリスを救ってくれて、ありがとう、マリエス」
「いえ、お嬢様を守るのが、私の仕事ですので」
うわ、何か……かっこいいな……マリエスさん。
「エリス、怪我は無いのね? じゃあ……家に戻りましょうか?」
そう言って、僕の手を握ってきた。僕は、どうしようかと考えて、出した結論は、母親なのでこの人と一緒に行く事に決めた。僕がこの世界に来て、まず思った事は、日本じゃないと言う事だった。だって、剣とか武器とか普通に売られていたし。母親らしき人に手を握られて、一緒に歩く著中で見かけるのは、魔法使いが着そうな服を着てる人や、いかにも人間じゃないって感じの顔が獣で、二足歩行をしている、獣人? と思われる人物が、普通に街の中を歩いているからだった。
数十分歩いて、たどり着いた場所は、大きなお屋敷だった。
男だった僕が、アパートで暮らしていた場所より、何倍はあるんじゃないか?ってぐらいの大きさだった。もしかして……このエリスって子、いいとこのお嬢様なのかも知れない。まあ、メイドのマリエスさんがいるから、お嬢様なのだとは思うけど……
お屋敷の中に入ると、マリエスさんが
「お嬢様、お疲れでしょうから、もう休まれますか?」
そう聞いてきたので、僕はちょっと考えてから
「うん、そうする……」
そう言って、相手の反応をうかがう。
すると、マリエスさんが
「お嬢様、では、部屋に向かいましょう」
と言って手を握ってきて、マリエスさんに連れられて行く事になった。
広い廊下を歩いて、一つの部屋に辿り着く。中に入ると、ピンクのカーテンがあり、洋風なタンスがあり、ぬいぐるみらしきものが飾ってあって思いっきり女の子の部屋って言う感じがした。
「では、お嬢様、私はこれで失礼します」
そうマリエスさんが言ってきたので、僕は
「あ、ありがとう……マリエス」
僕が言うと
「いえ、ごゆっくりと休んで下さいね?」
そう笑顔でそう言って、部屋から出て行った。
一人になって、僕は考える。まず自分は「エリス」と言う少女の中に入って、ここは日本ではなく、異世界と言う事、そしてメイドさんがいるお嬢様だと言う事。家族構成はまだ、母親らしき人しか会っていないけど、この子に兄弟、姉妹はいるのかはまだ判らなかった。言動に関しては問題はなく、文字も普通に読めるので、意思疎通はちゃんと出来る見たいので、そこはほっとした。で、どうやったら元の体に戻るかだけど……いくら考えても、全く判らなかった。
まあ考えたってどうしようもなかったので、とりあえず当分は「情報集め」に専念しようと思う。そうと決めて、僕は、情報を集める為、行動に移す事にした。
部屋の外に出て、何処に行こうかと迷い、とりあえず違う部屋から覗き見る事にした。部屋はいくつもあり、客間と思われる部屋、風呂とトイレと思われる部屋
そして、書斎を見つけたので、そこに入る。
書斎は、沢山の本があって、どれを閲覧しようかな……と思い「アルバ大陸の歴史」と言う本があり、その一冊を手にとって読んでみる。
内容はアルバ大陸と呼ばれる大陸の歴史で、詠んで行くうちに判った事は僕のいる大陸が、アルバ大陸だと言う事、そして住んでる町が「グランド王国」と呼ばれていて、その城下町にあるお屋敷に住んでいると言う事が判った。
分厚い本を読み終わり、次に何を読もうかな……と思ったら、お腹がくーと鳴ってお腹がすいてきた。空腹感を感じるので、試しにほっぺをつねって見る。
痛みを感じ、痛覚もあるので、やっぱりこれが現実なんだと実感した。
じゃあ、この空腹感を満たさなければ、死ぬんじゃないか……と思ったので書斎から出る。移動していると、メイドのマリエスを見つけたので
「お腹すきました……」
と言うと
「そうですか、お嬢様、食事の準備は出来てます、ではこちらです」
そう言って、食卓に案内してくれるみたいだった。
僕は移動しながら、当分は情報集めに専念しようと思っていたのでした。
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