第40話 犯人は語る
彼は
「この部屋はね、私が彼女たちの命を
待平は床に
そうしてこれまで殺したすべての人間の名を呼び終えたのか、待平はゆっくりと立ち上がり、
「笠根は、このコレクションの最後の作品として連れてきたんだ」
落ち着いた口調でそう言った。
「君も、私と彼女の性格が合わないことは知っているだろう」
ひょっとすると、待平は誰かに話を聞いてもらう機会を待っていたのかもしれない。でなければ、こうして界斗の前に姿を現して長々と語ることなんてしないだろうから。
危険な立場に置かれているにも関わらず、界斗はそんな
「私はかれこれ三十年ほど生きてきたけれど、彼女ほど
待平は壁に背を預け、灰色の天井を見上げている。
「始めは
待平はそこで言葉を切り、床で転がる界斗に視線を落とした。
「だけど、私には彼女をどうにかすることができない。彼女は私の言うことを聞かないからね。……そのくせ、君にはなぜか好意を示していて、君の言うことなら彼女は
待平は首を横に振って、再び灰色の天井を見上げる。
「結局、私はその矛盾を解決する方法を見つけることができなかった。だから、せめて彼女が私を嫌いであるうちに、私は彼女を永遠のものにしようとした」
彼が何を言っているのか、界斗にはよく分からなかった。それが顔に出ていたのだろう。待平は補足する。
「つまり、いつ彼女が私のことを好きになってしまうか分からないだろう? だから、私のことを嫌いなうちに彼女を殺して、私を嫌う彼女を記憶の中で永遠に
彼は結局のところ最後には笠根が彼のことを好きになってしまうことを恐れていたのだった。これまで三十年もの間に染みついた女性たちの像が、いつ笠根を取り込んでしまってもおかしくないと、そんな考えを持つほどに彼の思考はこの三十年で
「笠根が入学して私の部活に入ってから、もう半年も経った。いつ彼女が人形になっても不思議ではない。だから、一刻も早く今の彼女を殺す必要があった」
彼は何かに悪いものに
「まずは実験が必要だった。笠根をどうやったら最高の形で殺せるのか。それを明らかにするために、都内で手頃な女子中学生を
待平が心底真面目に話していることが伝わってきて、それが余計に恐ろしかった。
「検討には二か月ほどかかってしまったけど、何とかいい殺し方が見つかったし、幸運にも笠根はまだ私に対する嫌悪感を抱き続けてくれているようだし、本当に良かった」
「……笠根はどこにいる?」
「別の部屋で眠らせてるよ。もうそろそろ起きてるんじゃないかな。連れてきてあげるよ」
待平はそう言って壁から背を離すと、扉の前へと向かった。
ドアノブに手をかけた彼は界斗のほうを振り返って、いかにも言い忘れていた風に、
「あ、そうそう。さっき話したのは一時間前の私がそう考えていたって話だから。君が後をつけてきたことが分かったとき、もっと最高の形で彼女を殺す方法を思いついたんだ。だから、今からそれを試してみようと思う。ちょっと待っててね」
そうして、この部屋の扉はギシギシと音を立てて閉まり、後に残された界斗は無機質な
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