第32話 少年を待つ少女たち
「……遅いわね、
「か、会長、お気を確かにです! ……でも、確かに遅いですねぇ」
そう言って
時刻は午後二時過ぎを指している。
だが、実際には午後二時を過ぎても界斗は彼女たちの待つこの家に姿を見せていない。
この一時間、伊予が界斗に何度か電話やチャットで連絡を取ろうとしているが、一向に連絡がつかず、そのことが余計に伊予をイライラさせていた。
「やっぱり生徒会長になるのが嫌で、それで――」
舞歌は昨日の界斗が乗り気でなかった様子を思い出して、そんな風に言おうとしたが、
「あいつは約束を破ったりなんてしない!」
伊予は彼女の言葉を
「……確かに、界斗は勉強、部活ばっかりの面白みのない奴で、優柔不断で、偉そうなこと言うくせに打たれ弱くて、そんなダメダメな弟だけど、――絶対に約束は守るわ」
「……弟さんが
「べ、別に信頼なんてしてないってば。ただ、界斗は私の弟で、生まれた時からあいつのことを知っていて、それで、ただ単にそういう奴だっていうのを知っているだけ」
――それを信頼っていうんですけどね。
舞歌は口の中だけでそう
「では、弟さんは何かトラブルにでも巻き込まれているのかもしれませんね! 至急応援に駆けつけたほうがいいかもです!」
元気よく伊予にそう告げる。
「そ、そうね。ちょっと近くを探してくる。入れ違いになるといけないから、舞歌はここで界斗のことを待ってて」
界斗がトラブルに巻き込まれているという発想はなかったのか、舞歌の言葉を聞いた伊予は
「本当に、弟さんは幸せ者ですね」
他に誰もいなくなった部屋で舞歌は一人穏やかな笑みを浮かべ、彼女たちが帰ってくるのを待つことにした。
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