第12話 天使とともに食卓を
「……で、なんでこんなことになってるんだ」
帰宅した
「ん~、やっぱり母さんの手料理は最高だ。こんなに美味しい料理を二十年以上食べている父さんは幸せ者だな。――
「もう、あなたったら。そんな恥ずかしくなるようなことを人様の前で言わないでくださいな。――杏さんのお口に合うといいのですけれど」
「いや~、まさか界斗が彼女を家に連れてくるだなんて、お姉ちゃんびっくりだよ。眼球ポロリだよ。――杏ちゃん、ダメダメな弟だけど、どうか愛想をつかさずに
流れるような純白の髪に、燃えるような赤い瞳。純白のローブを身に
その少女とは他でもない――天使だった。
今の彼女の頭の上には、界斗と出会ったときにはあった天使の輪っかが見当たらない。彼女から天使の輪っかは着脱可能と聞かされたときに、「サンタの夢を壊されたときの自分もこんな気持ちだったのかな」とどうでもいいことを感じたのはここだけの話だ。
杏という名前はAngel(天使)の頭二文字Anからとって界斗が名付けた。流石に「彼女は天使です」なんて家族に紹介できるはずもないし、言ったところで界斗の頭がおかしくなったと心配されるのがオチだ。
そもそもどうして天使を家に連れて帰ることになったのかと言えば、界斗と天使が握手を交わしたあの後、当然ながら日本にやってきてからの三日間飲まず食わずで
交番に連れて行ったところで彼女の身元保証人が見つかるはずもなく、安定した衣食住は望むべきもない。
界斗がお金持ちの社会人であれば、宿代を渡して天使には当面今後の方針が決まるまでどこかのホテルなどに泊まってもらうという別の選択肢もあったかもしれないが、彼は中学生で、月二千円のお小遣いを両親からもらっている
彼に唯一とることのできた行動は、彼女を家に連れて帰ることだけだった。
しかし、いきなり家族のいる家に見ず知らずの彼女を連れて帰れば、当然家族が「誰だよ、その子」と首をかしげるに決まっている。「一体彼女は誰なんだ?」というその疑問に答えるために界斗が用意した答えが、「恋人」というわけだった。他にも「友達」などの答えも思い浮かんだが、女の子を友達をわざわざ家族のいる家に連れて帰るなんて、どう考えてもそれ以上の関係を
「杏さん、ゆで卵には母さん秘伝のたれがおすすめですよ」
父の
「ありがとう。……ん! これは
たれをつけたゆで卵をかじった天使が目を見開き、ホクホクとさせる小さな口からは白い湯気が出ている。
ちなみに天使が敬語を始めとした礼儀といったものに
「で、いつもより帰りが遅かったのは、杏ちゃんと
伊予は小悪魔的な表情を浮かべながら、界斗のほうへと身を乗り出す。
「そ、そんなことしてねえよ。単に駅前のカフェで
「ふーん、そうなんだ」
……伊予の含みのある表情を見るに、どうやら「成功」とは言い
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