推しとすれ違ったら結婚を申し込まれたのですがこれはなんていう有料イベントですか?
柊ユキ
第1話 始まり
その瞬間までは、本当に、いつも通りの日常だった。
いつも通り起きて、学校に行って、放課後は友達と遊んで。
そんなありふれた日常が、確かにあったはずなのに……
「ねえ、君。俺と結婚してくれない?」
「んぇ、はい???????」
ひとつ言わせて欲しい。
何がどうなったらこうなるんでしょうか
遡ること数分前。
友達との会話の内容を思い出しつつ、家への帰路についていたとき。
前からすっごいイケメンさんが歩いてきた。
帽子とマスクをしているにも関わらず、イケメンオーラが、なんていうか、すごい。
その人は、私の推しである雨宮颯斗(あまみやはやと)さんにとても良く似ていて。
うわー、うわー……!推しとそっくりだ……!
というかもう本人なんじゃ……?
なんて舞い上がりそうな心を押さえつけて、そそくさと隣を通り過ぎようとした。
すれ違うまであと数センチ、といったところで何故かイケメンさんに腕を掴まれて。
……冒頭に戻ります。
まって、本当に待ってほしい。
声を聞いて確信したけどこの人私の推しだ!?
腕をがっちりと掴んだままトンデモ発言をしたその人は、推しでした……って、信じられるか!
前世の私、どれだけ徳を積んだらこんな偶然に遭遇できるんでしょうか。ありがとう。
有料イベントかな……?いくら払えばいいんでしょう。
……あ、今手持ちがない……
というかこのままだとただ奇声発して
「はい」って言っただけの変な人だ、私。
現実逃避しそうになったけど、なんとか会話を繋がなければ。
頑張って「あの、」と声を絞り出すと、とてつもなくいい声で「ん?」と返ってきた。ひぇ……
「……けっ、こん……って、どういうことでしょうか……?」
「そのままの意味だけど……?」
…………そういえば、雨宮颯斗さんって超が数個つくレベルの天然だったな……
なんて考えてしまう頭の中は、完全にスペースキャット状態。現実逃避、遂に始めました。
どこかのヒロインのように恋愛面だけ感が悪いなんて訳でもないので、それが何を意味するのかはもう分かっている。
……つまり?推しは私に一目惚れか何かをしてしまったと……???
私は推しが好き、推しは私が好き。
それはいこーる、推しと付き合う……?
そんな思考の終点に着いた瞬間。
「推しと付き合うのは解釈違いですので!!?」
そう叫びながら、会話が続くにつれ_続いていたかは微妙だが_緩んだ手を振り払って駆け出した。
声が裏返ったが、そんな事はどうでもいい。
とりあえず逃げよう、そういう結論に至った
推しとエンカウントして逃げるとは思わなかったけれど、人間、許容範囲を超えると本能的に逃げようという思考が働くらしい。知らなかった
後ろから追いかけてくる気配もないし、
家はすぐ近くだからそこまで走ってしまおう。
……これで追いかけてきたら悲鳴をあげてしまったかもしれない。よかった……のかな?
これでもう会うことは無いんだろうなぁ……
……なんて、呑気に思っていた私に言いたい。
今後、とてつもない頻度で会うことになるぞ、と。
推しとすれ違ったら結婚を申し込まれたのですがこれはなんていう有料イベントですか? 柊ユキ @_rey_nuko_241
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。推しとすれ違ったら結婚を申し込まれたのですがこれはなんていう有料イベントですか?の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます