第八話 色っぽいけど色っぽくねぇ!

 ガキンッ!


 鍔迫り合いは互角に終わり、ミイナとキングゴブリンは距離をとって警戒する。


「なかなかやるじゃない」


「お前こそ。この俺様のパワーと互角とは、今まで殺した勇者とはやはり違うな」


「当然よ。だって私だもの」


 ミイナは胸を張るが鎧を着ているので健やかに育った胸はあまり目立たなかった。


「ふん、自信過剰な女だ。だがお前はここで死ぬ。その理由がわかるか?」


「知らないわ。だって死ぬのはアンタなんだからね!」


 ツンデレっぽい言い方でミイナはキングゴブリンへ剣先を向けた。この構えはまさか!


「六皇だか四天王だか知らないけど、とっとと私の視界から、いや、この世界から細胞一つ残さずに消えなさい! 『ホーリーライトキャノン』」


 (自称)勇者とは思えないとんでもない罵倒をしながら数百ものゴブリンを消し去ったあの殺戮光線を発射した。

 いくらあのキングゴブリンでもこの光線に直撃したらただでは済まないだろう。


 だがしかし。


「さっきの答えを教えてやろう」


 キングゴブリンが何処かから木彫り人形を取り出した。よく見るとそれはデフォルメされた魔法使いの帽子を被ったゴブリンの人形だ。

 キングゴブリンは殺戮光線が直撃する寸前にその人形を手で折る。


 すると空間にヒビが入り。


「ようやくワタクシの出番のようですねぇ」


 セクシーな声がどこからともなく聞こえたかと思うと、キングゴブリンの正面にバリヤが展開されミイナの殺戮光線を防い――。


「ぐわぁぁぁぁっ!」


 防げてねぇええええええ!


 殺戮光線をまともに受けたキングゴブリンは消えてはいなかったが全身から焼き焦げた後のようにプスプス煙を出していた。


「ごめんなさいねぇ。バリヤの出力ミスっちゃった」


「きっ、キサマあああああ!」


 どこから現れたのか知らないが怒ったキングゴブリンの剣をバリヤのようなものでガードする女ゴブリンがいた。

 魔女の帽子を被った八頭身の体にモデルのような体型。そして色っぽい声をした超ぺったんこな胸の女ゴブリンは逃げるようにキングゴブリンの剣が届かない高さに浮きながら。


「初めましてぇ勇者様ぁ。ワタクシは『ナイトメアゴブリン』よぉ」


「初めまして。私はミイナ。そしてさよならナイトメアゴブリン。『ホーリーライトレイピア』」


 ミイナが勢いよくジャンプしながらなんの躊躇もなくナイトメアゴブリンの心臓を刺そうとした。


「あらぁ。可愛い顔して激しいのねぇ。『ゴブリンマジックバリヤ』」


 ナイトメアゴブリンはバリヤを展開しミイナの剣をあっさり受け止める。


「ぐぎぎ――」


 しばらく攻撃を続けていたミイナだったがヒビすら入らないバリヤにこれ以上無駄だと気がついて攻撃をやめた。


「厄介なバリヤね」


「ありがとぉ」


「褒めてないわよ」


 ミイナのこめかみに怒りマークが浮かび上がるがナイトメアゴブリンはそんなミイナへ大人っぽく前屈みになって唇を人差し指で触りながら答えた。ちなみにそのステータスは。


《ナイトメアゴブリン》(魔物)

 ATK 9000

 DEF 8800

 SPD 9000

 MP  28000 《魔女王の杖》+3000

《スキル》

 大魔法使い。魔力超回復。火の加護。水の加護。風の加護。大地の加護。

《身長》

 172センチ

《体重》

 52キロ

《スリーサイズ》

 バスト 63 ウエスト 63 ヒップ 90

《好きなタイプ》

 私が意地悪しても許してくれる男

《経験人数》

 6人

《好きな体位》

 屈曲位

ーーーーーーーーーーーー


 おわかりいただけただろうか。


 俺の神眼は女性(人間型の魔物や天使、精霊なども含む)相手に使うとあら不思議。とんでもない付加効果がプラスされるのだ!

 だからミイナのステータスはまだ見ていないんだよ。ミイナは俺のこと『旦那様』とか言うけどまだ出会って一日も経ってないし。ちょっとだけ見たい気持ちもあるけどもう少し仲良くなってからだよな。決して《経験人数》が0人じゃなかったら死にたくなるとかそんな理由じゃないからな。あくまでプライベートの問題だからせめてキスくらいした後にこっそり見るのがいいよな。ミイナの尊厳の為にもそれがいいなうん!


「それにしても」


 俺はナイトメアゴブリンのステータスを見てこう思った。

 スタイルも声もいいのに。とってもお姉さんっぽく色っぽくて経験人数6人もいるのにバスト63でウエストと同じって…………残念だ。

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