難しい苗字
「難しい苗字だね」
隣の席から女子生徒の声がした。たしかに僕の苗字は画数が多く、普段使われない旧字体が含まれている。
転校が多い僕は当たり障りのない回答をあらかじめ用意していた。
「ああ、だから家族以外は書き方間違っている人が多くて困っちゃうよ」
「そうなんだ。ねえ、どんな字書くのか教えてよ!」
興味津々な様子で聞いてくる彼女に僕は書き方をレクチャーした。
「なかなか難しいね……」
「そうだね。僕はたくさん書いているからもう綺麗に書けるけどね」
悪戦苦闘しながらもなんとか覚えた彼女は嬉しそうだった。
今では彼女の方が綺麗に僕の苗字を書けるようになっている。
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