鈍感彼女
@hanamima
プロローグ
俺がこの会社に入ってしばらくして
「遅くなったけど歓迎会やろうぜ」と
誘いがあった。
その年は中途採用を強化したので
同期が俺の他に3人いた。
内2人は年下の女性だ。
ノリの軽い5つ年上の部長が
主催で行ってくれることになったが
ほぼ絡み無しで他部署の同期との飲み会は
とても気が引けた。
酒が飲めないと言ったら
じゃあ迎えに来い と部長に言われ
運転手は慣れているので快諾した。
「今日はRさんとNさんも来るから」
同期女性ふたりね。
「お前あんまり話したことないやろ?」
そっすね。何話していいかわからないし。
話題がないのにペラペラ話せる男(部長)の脳は
どういう仕組みになっているんだろう。
「2人ともいい子やで。美人やし。」
だから余計に苦手なんですよね。
「ほんまはあの部署にはあと一人女の子おるけど
今育休中やから、また顔出したときに会えるぞ」
あ、それは何か前に聞いたことあります。
たしか…
「hanaさん、でしたっけ?」
「そう。なかなか良い子やで。
ノリ良くて、そこそこ可愛くて
おっぱい大きくて
俺の事 サイフ やと思ってる」
え!!この部長を?!
一体どんな悪女なのかと恐ろしくなった。
店に着くと、すでに2人と、
その女上司である橋口さんが座っていて
俺たちが見えると手を振ってくれた。
「お疲れ様でーす!」
なんか合コンみたいだな。
部長は当たり前のように
女性2人の間に座る。
俺は橋口さんの隣に。
橋口さん、機嫌がいい時と悪い時で
態度ががらりと変わるため
少し、いや、かなり苦手。
今日は機嫌良さそうだけど、
酒を飲むとめんどくさいタイプだろうな。
飲み物と料理が運ばれて来て
少しずつ和やかになっていく。
ほら、橋口さんがめんどくさくなってきた。
「坂下くんはー、どの子がタイプー?」
声が大きい。耳が痛い…
「Rちゃんは美人やしー!
Nちゃんも可愛いしー!
あ、hanaちゃん知ってる?!」
「いや、まだお会いしたことないですね」
「いい子やねんでー!ほんとに!
部長もお気に入りやからね!」
「みたいですね」
「俺の事サイフやと思ってるよなぁ」
「あはは!確かに!
飲み物買ってくださーいってね」
「100円だけ渡したら、 ん?足りないです♪って
その場におる全員分をカツアゲしてくるからな」
他の女性社員ふたりもまだ会ったことがないらしく
「Tさんが hanaさんは影のボスやからって言ってた!」
「Tさんがhanaさんは仕事ができる!って言ってた!」
と好き放題。
Tさんというのは、hanaさんが産休に入るタイミングで引き継ぎされた人で、顔はめちゃくちゃ可愛いのに仕事が全くできないという特殊人物である。
「あの子にhanaちゃんと同じ仕事ができるわけないのにねぇ。hanaちゃんほんまによくデキる子で、私もうhanaちゃんがいないと仕事できないねん!」
そう言って、チューハイをぐいっと飲み干した。
「早く戻ってこないかなぁー!会いたい!」
その場にいなくてもこんなに溺愛ぶりが伺える。
「おいおい、飲みすぎか?」
「だからさぁ!坂下くんは、どの子がいいのー?」
「…Tさんは可愛いですよね。初めて見た時、めちゃくちゃ可愛いなって思いました。嫁がいなかったら狙ってたかも?」
ギャハハ〜!と大ウケ。
まぁ、可愛いのは顔だけで
仕事は覚えられないし会話も成立しない
不思議な人だったけれど。
俺は、
その場にいるふたりから選ぶのは失礼すぎるし、
会ったこともないhanaさんを選ぶのもおかしいので、Tさんを引き合いに出しただけで
別に狙うとかタイプとかそーゆーわけではない。
そもそも社内でそーゆーのは
面倒でしかないはずで
そもそも社内の女性をそーゆー対象にはしない。
なりそうもないし、なるはずもない。
そう、知らなかったんだ。
この時はまだ、何も…。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます