「悪魔のいる天国」 微糖
@Talkstand_bungeibu
第1話
みなさん、こんにちは!
私、天乃川めぐみ、14歳。
シュークリームとプリクラが好きなちょっと夢見がちなところのある女の子!
恋に部活に勉強に、忙しい日々を送っていたんだけど、突然アウグトノフっていう妖精さんにマジカルスティックっていうのを渡されて、愛の天使になれって言われちゃったの!
マジで訳のわかんない事だらけだけど、めぐみは今日も愛を守るためにがんばるよ!
急に背中を叩かれた。いた〜い、なにするの?
「あぁ、ごめんなさい田口さん。なんか影薄かったから見えなかったのよ。ごめんね〜」
クラスメイトの森口さんと藤野さんだ。誰なんだろう、田口さんって?私によく似た女の子かな?
「そう?私においに敏感だからずっと気になってしょうがなかったのよ。ねぇ田口さん、ボディソープって知ってる?」
「ちょっともりり、言い過ぎだって笑」
「しょうがないじゃん、ほんとのことなんだから。この季節臭くてしょうがないのよ。ふじの、早く逃げよ?」
何をいってるんだろうこの二人は…。もしかしたらダイキライーに洗脳されてるのかも。
あ、説明しておきますね。
ダイキライーは闇の国から来たとっても怖いモンスターで、それに捕まると悪口を言ったり髪を掴んだり、お腹を叩いたり髪を燃やしたりしてくるんだ!
だからこの二人のためにも早く呪縛から解いてあげないと!
ちょっと人目につきやすいけど…。マジカルスティックを取り出して…。
愛と乙女の名の下に、穢れた魂よ黄泉の国へと戻りなさい!マジカルラブスプラッシュ!
森口さんはぽかんとした表情で、藤野さんは吹き出しそうな顔をしながら見ていたけど、マジカルラブスプラッシュが命中!
花火みたいなにおいと強い反動があったのと同時に、藤野さんの顔が粉々になった。
藤野さんは全身が震えていた。かわいそうに、寒いんだね。
でもしょうがないじゃん。存在感がないとぶつかってもいいんでしょう?
森口さんは目をまんまるにして口をあんぐり開けて声も出ないみたいだった。
その後全身の力が抜けたみたいに尻もちをついてだと思ったら変なにおいがした。
気がついたら森口さんはおもらししてるみたいだった。あはは。
さっきにおいに敏感って言ってたのは誰なんだろうね?自分でトイレの管理もできないんだったら中学校に来ないでお母さんにおむつ変えてもらってたら?近くに来ないでよ汚いじゃない大体あなた中学生のくせに香水とかつけまくってるせいでよっぽどそっちの方がくさいったらないのよ私と同い年なのにあんなに高い物どこで買うんだろうねまああんたみたいな淫売顔ならなんとなく察しはつくけどね淫売淫売淫売下の管理もできないくせに淫売の中学生がいるなんて日本はいつからこんな国になってしまったんでしょうかそもそも
私は森口さんにもマジカルラブスプラッシュを放った!ふー、こりゃ大変だ。
一日に二匹もダイキライーがいるなんて、やっぱり闇の勢力が拡大してる証拠ね!
…っていっけなーい!こんなんじゃ学校に遅刻しちゃうよー!
教室にヘッドスライディングした時間が6時59分、あぶなーい。あやうく野島先生にまたしかられるとこだったよー。
机を見たら…机に花瓶が飾ってあった。教室のいろんな所からくすくす笑い声が聞こえてくる。
一体誰なんだろう。白馬の王子様。私のことが好きなのにシャイで言い出せないから毎日毎日、花を飾りにくる。
でも送ってくれるんなら、もっとかわいいお花にしてよね!
チャイムが鳴って野島先生が入ってきた。
野島先生は緊張した顔をしてた。どうしたんだろう?
「えー、突然だがうちのクラスの森口と藤野が亡くなった」
クラスが騒然とする。
「二人は登校してた時に何者かに襲われたらしい。詳しいことは後で話すがとりあえず集団下校を…」
そこまで言って野島先生はくんくんにおいをかぐようにして私の方を見る。
「田口…お前…」
だから先生、私は天乃川だってば。
「鞄の中見てもいいか…」
先生は私の鞄を掴む。
やばい!このままじゃマジカルスティックが見つかっちゃう!
必死に抑えようとしたものの、鞄の中のものが散らばって、マジカルスティックが出てきちゃった!
先生は一瞬青ざめたものの、あわてて取り上げようとした!やめてよ、はなして、危ない!
こうなったら…マジカルラブスプラッシュ!
先生の肩口にラブスプラッシュが命中したと同時に、クラス中に悲鳴がこだまする。
みんながパニックになった様子で机をひっくり返す。
「お前…なんでこんなもの…」
こんなものって何?これはマジカルスティックだよ?
大体いつも先生は成績に関係ない事はこんなものこんなものって言うけどそれだって私たちにとっては同じくらい大事なものなんだよ?なんで自分に興味ないことはくだらないものって勝手に思っちゃうのかなあ?あと先生私がいじめられてたときいつも見て見ぬふりしてたよね自分のクラスではそんなことありませんって顔してたよねなんでしかってくれなかったのなんでたすけてくれなかったのなんでいつも逃げたのなんで私が休み時間に描いた漫画をクラスのみんなの前で発表して晒し上げたのなんでクラスのみんなに慕われた先生でいたいのなんでなんでなんでなんでなんでなんでなん
ふー。まさか先生までダイキライーにつかまっちゃうなんて。
大人なんだからしっかりしてほしいよなぁ。
クラスががらんとしてる。うるさい声もしない。
なんだか久々に落ち着いた気分!
ん?なんだかうるさい音がするなぁ。かちかちかちって。
教室の隅っこに健太郎君がいた。健太郎君!
「来んなよ!」
ねぇ、健太郎君。なんでそんなこと言うの?
「その銃どっから持ってきたんだよ!」
あ、これはね、マジカルスティックっていう武器なんだよ!
「悪かった…。俺たちが悪かったよ、お前がいじめられてるのを知ってて助けてやらなかったのは悪かったよ!でもこんな事おかしいって田口!」
空に向かって空砲を撃つ。
天乃川でしょ。
「な、なんだかよく分かんねえけどさ…。そ、そうだ。こっからは仲良くしよう?お前が一緒に行こうって言ってた映画連れてってやるよ?それから、えーと、遊園地でも映画館でもなんでも一緒に…!」
健太郎君の悲鳴が聞こえる。
運動部で鍛えた足から血が出ている。
虫が良すぎない?一緒に連れてってくれるんならなんで私が最初に声かけた時に行ってくれなかったのなんでお前に告白されたのがばれたらクラスで生きてけないっていったのなんでいつもぶすっていうの私はかわいいよかわいいよかわいいよかわいいよなんで勇気出して話しかけただけなのにやな顔するのほんとは私のこと好きなのに照れてるんだもう健太郎君ったらかわいいなあもしかしたら白馬の王子様は健太郎君だったのかもしれないねでもごめんなさい股間に一発顔に一発撃って端正な顔がぐちゃぐちゃになってしんでもらうね
愛と乙女の名の下に、穢れた魂よ黄泉の国へと戻りなさい!マジカルラブスプラッシュ!
カチリ。
いけなーい!マジカルラブスプラッシュが撃てるのは一日に6発だけだっ
思考が吹き飛んでずきずきする。
いたいよ。
いたいよ。
なんで殴るの?
なんでそんな怖い顔するの?
「はぁ…はぁ…なんでだよ…なんで森口が死なないといけなかったんだよ…」
なんでってダイキライーに捕まったからに決まって
いたいってば。
なんで叩くの?
なんで森口さんの事がそんなに大事なの?
「お前こそなんで知らないんだよ…。俺たち付き合ってんだよ」
うそだ。
なんでそんなうそつくんだろう。
健太郎君もダイキライーに捕まったから嘘ついてるんだ。
「それなのにつきまとってきやがって…お前なんて人間じゃねえ!この悪魔!」
違うよ。天使だよ。
健太郎君どうしたんだろう。
白馬の王子様なのに。
くやしいな。
こんなところで。
息が苦しい。
首が痛い。
手を外そうとするけど、意識が薄れる。
「うああああああああああああああああああ」
健太郎くん…。
ふにゃっと健太郎君の体が落ちてくる。
どうしたの?
もしかして…。二人の中に芽生えた愛の力でダイキライーが浄化されたの?
「何言ってんだよ」
教室の入り口に女の子が立っていた。
この娘は…。隣のクラスの橋本さん?
「ほら、鞄の中にあった銃と弾薬。とっとと準備しろよ」
銃じゃなくてマジカルスティックだってば!
「なんでもいいけどよ」
でも、なんで助けてくれたの?
「私もこんなとこやだったんだよ。だから誰かぶち壊してくれるやつがいるんじゃないかって思ってたけど、まさかお前みたいなのがとはな」
なんだよー。その言い方。
「いくぞ、もう通報されたらしいから手強い戦いになると思うけど、やれるとこまでやってみよう」
うん、じゃあ橋本さん愛の天使2号ね。
私はジャックナイフが刺さっている健太郎君をどかして立ち上がった。
「悪魔のいる天国」 微糖 @Talkstand_bungeibu
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。「悪魔のいる天国」 微糖の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます