望郷の雪

小望月堂

第1話 逢引

「ワダシので…イッてぇ!」


 由美子は雄太が果てるタイミングを知っている。雄太はそろそろという時に決まって由美子を四つん這いにさせる。


 そして由美子のアソコを後ろから舐める。由美子は「うう〜」と一人でイってしまうのを我慢しながら雄太の最後のひと挿しを待っている。舐められながら、お尻が自然と揺れ出す。由美子のもう我慢出来ないというサインだ。


 雄太は舐めながら器用にゴムを外し、立ち膝になった。そして両手でお尻の割れ目を押し広げるようにして、ゆっくりと由美子を味わうようにして中に入っていった。


 こうなると、もう雄太は早い。由美子は一緒にイこうとして我慢していた淫靡な想いを解放するために、両爪先を雄太の立膝の内側に入れてキュッとアソコを締めてから、枕を縦にして抱いた。


 準備はOKだ。その刹那、雄太の両手が由美子のお尻から腰に移動する。そして何度か抜き挿しを繰り返した時、腰骨のあたりをしっかりと掴み、一滴も漏らさぬように身体を密着させながら、声にならない呻きを一緒に吐き出して、ついに、イッた。


 由美子はそれに合わせて、あのセリフをまるで叫ぶように、言う。二人の至福のひとときだ。



 二人が逢引する場所は郊外のラブホテル「上田ノ城」。別々の車で来て駐車場で待ち合わせてからチェックインするのがいつものパターンだ。


 中心街の駅前から40分ほど車を走らせると、上田海水浴場がある。短い夏の間だけ親子連れで賑わうエリアも別な目で見ると季節に関係なく毎晩賑わっているのがこのラブホ通りだった。


 海沿いの国道は大概寂しい一本道だが、このエリアのほんの1〜2キロだけは夜になると眩しいくらいだ。市外県外から来る人たちは誰もが思わず微笑んでしまうという有名なラブホ通りも、恥だと感じている市民が多く、よく自虐的なネタとして語られる。


 しかし、利用しているカップルたちからは絶賛されており、皆、常連になっていく。雄太と由美子も何軒か試してみて、秋頃には「上田ノ城」の常連になっていた。



 二人がこんな関係になったのは、同窓会の実行委員に選ばれたことがきっかけだった。二人が通っていたのは戦国時代に城山だった小高い山の上にあった白南中学校。20期生の有志が年始に実行委員会を立ち上げ、そのメンバーは有志たちが指名していた。その中に雄太と由美子がいた。


 実行委員会の顔合わせの後、懇親会が同時開催されたが、最初のうちはお互いに顔がわからなかった。名簿で旧姓を辿りながら、まず声を掛けてきたのは由美子の方だった。


 名前と顔が一致すると二人はあっという間に打ち解け合った。共にバツイチで、しかも高校生になる子供がいて…そして、何より中学時代には同じ悪友たちのグループで一緒に過ごしていたのが決定打だった。


 高校は別々で、お互いにその後に何をしていたかも知らなかった。しかし、いざ会ってみると一気に距離は縮まり、あの頃に戻れたような気分になった。とにかく二人にとって同窓会の実行委員会は都合が良かった。子供にも説明がつくし、同窓生たちにも怪しまれることもなかった。そして、実行委員会の開催日以外に無理に狭い街で会わなくても良かった。


 二人は同窓会の準備が楽しくてしようがなかった。そして何回目かの実行委員会の後、二人は結ばれた。どちらともなく、誘い、頷き、駅前から離れて海へ向かうと心が軽くなった。そうして肌を重ねるようになってから半年。お互い身体の相性も良かったし、若い頃と違って面倒な恋愛の手順も、余計な駆け引きもない関係性が心地良かった。


 それにしても中学卒業から既に30年以上が経つ。由美子はとても51歳とは思えないほど綺麗で、まさに秋田美人と形容するにふさわしい容姿の女性だった。


シャワーを浴び終わった雄太に由美子が語りかけた。


「昼過ぎによ、駅前でサドシど、会ったぁ」


「アレ?早ぐねぇが?」


「んだ。はやぐ来たんでねぇ?」


「忘年会、明日だや」


「んだや、なぁ」


 雄太や由美子たちが準備してきた同窓会は年明け1月2日の開催。それに合わせて中学時代の悪友グループだけで忘年会を開催しようと言い出したのはリーダー格の博志だった。


 グループの中で唯一東京に出ていたサトシが忘年会に参加することが決まってから、博志は張り切った。博志は嬉しさのあまりメンバーに数十年振りに電話を掛けたり、時には自宅にまで押しかけて参加を迫った結果、当時のメンバー全員が集まることになっていた。


 雄太と由美子もサトシに会えるのを楽しみにしていた。そしてサトシに連絡を取っていたのは雄太だった。その最後のやり取りでは忘年会の当日の12/30、つまり明日の夕方に秋田駅に到着するから、開催時間ギリギリになってしまう、という内容だった。


「どれ、メールしてみるが、な」


 雄太は裸の由美子を後ろから抱き締めながらスマホを手に取り、メールをした。サトシからの返信を待つ間、由美子の胸を触りながら首筋にキスをする。由美子の優しい匂いが雄太を和ませる。


 すると、また大きくなってきた…。由美子はそれを背中で察知すると、振り返るなり咥えていた。もう1回しようかな、と本気になりかけた時、由美子が棒を握りながら、変なテンションで語り始めた。


これが、事件の始まりだった。


続く

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る