第3話
「とりあえず装備買い揃えようか」
俺はそのまま帰る予定だったが、リンネがそう誘って来たので装備を買いに行くことに。
「こんなに広いんだな」
リンネに連れられてやってきた店は、地方にある大規模商業施設並みの広さを誇っていた。それでいて売っている商品は全てダンジョン攻略関連と、市場の大きさを思い知る。
「参加人口がめちゃくちゃ多いし、ジョブも無限にあるからね。これだけないと十分な量を展示できないんだよ」
言われてみれば、最初に選べるジョブだけでも80を超えているのだ。そうでないジョブを含めればこの規模になってもおかしくはないか。
「とりあえず各々武器を探すか」
「そうだね」
お互いにジョブが違うので別れて探すことになった。
「ここか」
頭上に並んでいるジョブの案内を元にどうにか『狩人』ゾーンに辿り着いた。
そこには弓矢や罠、短刀、ピストル等様々な種類の武器が置いてあり、『狩人』というジョブの選択肢の多さを物語っている。
とはいえ全部を使う必要はない。というより全てを装備したら重装備すぎる。
だから数種類に絞るべきなのだが、
「これが良いな」
俺はこの2種類に決めた。
購入を済ませ、集合場所である駐車場にリンネがやってきたところでカメラを回し始めた。一応外なので動画だ。
「この間の配信でジョブを決めたので、今回は装備の初お披露目となる」
「じゃあ僕から発表しようかな。これこれ」
武器の入った箱から取り出したのは、ゲームでも見慣れたショットガンとライトマシンガンだ。
「何を狙ってこれにしたんだ?」
大体理由は分かっているが、一応聞いてみる。
「ノーコンだからです!」
自信満々に宣言した。連射力が高いライトマシンガンと近距離で圧倒的な命中率を誇るショットガン。たくさん撃って少しでも当たれば良いだろと考えたのだろう。
「自信満々にプロゲーマーが言うな」
「これでも強かったんだから問題なし!」
本人が納得しているならそれで良いだろう。
「それよりもAIMはどうなのよ」
武器をしまったリンネは興味津々に聞いてきた。俺が何か面白い武器でも持ってくるのではと期待しているのだろう。
「これだ」
取り出したのはブーメラン。縦横無尽に好きな角度から敵を狙える長射程最適解だ。
それを見たリンネが何故か笑っている。
「どうしてそんなに笑うんだ」
「だってブーメランって……弓で良いじゃん」
「何を言っているんだ。弓は直線か上から以外で攻撃不可能出来ないだろ。好きな角度で投げて狙撃できる無限の可能性を秘めた武器だ」
どこに居ようが、建物に逃げ込もうが、敵を認識したら命中出来るのが俺の理想だからな。
「まあ見てからのお楽しみだね」
「任せろ。笑ってすみませんでしたと土下座させてやる」
俺の神スナイプを見て震えるがよい。
翌日、俺たちは武器を試すべく昨日のダンジョンにやってきた。
俺は昨日武器のついでに買ったタイガーウルフ?とかいう奴の皮を使った防具を着用している。一方リンネは、昨日の重装備ではなく迷彩柄の皮装備に変わっていた。流石にしんどかったのだろう。
「昨日の生放送、凄い評価だったな」
昨日家に帰りパソコンを開くと、いつも以上にけたたましい通知音が鳴り響いていた。
その通知元は、昨日配信した生放送。
動画の面白さとか迫力とかではなく、迷うことなく命中に全振りしたことが話題になったらしい。
コメントを見ると、ネットニュースになっているとのこと。
「命中にステータスを全振りした人なんてこの世に一人しかいないだろうし」
「そんなものか」
少しくらいは居るべきだとは思うが、使いこなせる程根性のあるやつがいないのだろう。
「そんなもんだよ。それよりさっさと配信を始めるよ」
「そうだな」
俺とリンネはカメラを準備し、配信を始めた。
「それじゃあ配信を始めるよ。武器に関しては概要欄に商品のリンクを貼ってあるけど、見たい人は動画も見てね」
先にそう説明した後、軽く自己紹介してから探索を始める。
「いたぞ」
1㎞先位に、昨日も倒した兎が居るのを発見した。
「どこに?あ、居た」
リンネは見つけきれなかったらしく、腰に付けていた双眼鏡で敵を確認していた。
「まずは俺がやるぞ」
俺はブーメランを入れていたリュックを手元に置き、二つほど取り出した。
「ふん!」
俺は1㎞先に届かせるべく、多少気合を入れて放り投げた。
「お、当たった」
「当然だ」
俺が投げたブーメランは二つとも兎の頭に命中し、倒すことが出来た。
そして戻ってきたブーメランを、
「痛っ」
キャッチできなかった。取り損ねたブーメランは頭と腹に直撃した。
「そこミスるんだ」
「当てること以外考えていなかった……」
弾を弾にぶつけることはあれど弾をキャッチする経験は無かったからな。そこにエイムは関係ないから。これは特訓が必要なようだ。
「でも初めて使ったのに当てられるのは流石AIM」
「いや、当てる方もまだまだだ。理想の放物線を描くことが出来なかった」
今回は実験もかねて弧線で縁を描くようにイメージをして投げたつもりだったが、実際に描かれたのは横に伸びた楕円だった。
「よく分からないけど、エイムが言うならそうなんだろうね」
「とりあえず配信外で練習をしておくことにする。とりあえず次はリンネだ」
ソロ配信ならここから手頃な的を見つけて練習をするところだが、今はコラボ配信だ。店舗も考えてリンネに番を譲った。
「その前に採取に挑戦しよう」
「今回はカバンも持ってきているしやってみるか」
俺たちは兎の死体に近づき、剥ぎ取りを開始した。
とりあえず体の一部を切断し、血抜きをする。
血が落ちなくなったところで、解体に移る。兎は食用以外で需要は無いらしいので、皮を丁寧に切除し、可食部が少ない足を切除し胴体のみにする。
「とりあえずこのくらいで良いか」
「ウィニーラビットだしね」
正直こいつを売ったところで大した金にならないからな。今日の夕食分が確保できれば十分だろう。
俺はそれを保存用のカバンに入れて、リンネの倒すための兎を探しに再び移動を始めた。
「じゃあ今度は僕の番だね」
数分程探した結果、2匹でいるウィニーラビットを発見した。
今回はライトマシンガンを使うらしい。少量のリロード用の弾薬を腰についていたホルダーにセットし、至近距離まで近づいていった。
「オラア!」
リンネが取った手段は、なんと接射。
銃のメリットを完全に捨てた何ともアホらしい攻撃だった。
「どうよ!」
リンネはどや顔をしているが、あんなの人に見せてドヤれるこいつの精神状況を知りたい。
「お前バカだな」
「こうでもしなきゃ当たらないから仕方ないでしょ!本物の銃使ったこと無いんだから!」
「ならあらかじめ練習しておくとか最初は遠距離から撃ってみるとか方法あっただろ」
これだからこいつはエイム力がゴミなのだ。
「それはそうだけど、初めての銃での戦闘に舞い上がっちゃって」
こいつはいかなる戦闘でも冷静なことに定評があったが、意外と現実ではそうでは無いのかもしれない。
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