ネタバレ済み告白。返事もネタバレ済み。
俺は、クラスメイトの
俺が嘉島に心惹かれるようになったのは今から1ヶ月ほど前の事だ。きっかけと言えば家に上がらせて貰った時、二人でパーティーゲームを遊んだ後眠くなったのか昼寝を始めた嘉島の寝顔を見た時だ。無防備な姿がどこか可愛らしくて、嘉島とは昔から友人だったせいかそれに気がついてなくて、でもその可愛さに気がついてしまったときには恋心が芽生えていた。いや、もしかしたらどこかに隠れていたのがそれが切っ掛けとなってでてきたのかもしれない。
しかし、そんなことはどうでもいい。俺の頭を悩ますのはどういう風に告白すれば快諾してもらえるか、あるいは断られるにしてもお互い傷つかずすむのかということなのだ。
「なかなか名文が思いつかん。時間があるとは限らんというのに。」思わず独り言が漏れる。放課後、みんなはすでに帰り俺は自習をするフリをして自分の教室で恋文をしたためている。時間が無い、それは具体的なデッドラインがあるわけじゃない。しかし嘉島は可愛くて性格も良い。ならば俺以外にも片想いしてるヤツなんていてもおかしくは無い。恋愛とは早い者勝ちなのだ。少しでも遅れたら想いは届かなくなるのだ。
と、あれこれ悩んでいるとポケットのスマホが鳴動する。電話がかかってきた。出てみると、クラスメイトの
−−−−−−−−
「サンキュー!助かったぜ高森!取り込み中すまんかった。」
「いや、いいよ。別にヒマだったし。」俺は半分本当の事を言う。恋文の執筆なんてヒマなときにするものだし。タイムリミットがあるとは言っても。
「そうなの?ま、それはさておき。届け物のお礼にマル秘情報を教えるよ。」マル秘情報
、こいつがそう言って持ってくるのはたいていろくでもない。
「前みたいに家庭科室の食材を盗み食いしてたのが教頭だったみたいなくっだらねえものじゃないだろうな?」
「勿論さ。で、これはお前に関わってくる話なんだけどさ。嘉島ちゃんって居るじゃん、俺達のクラスメイトの。その子が近々お前に告白するらしいぞ。」
「……えっ、ええっ!?それは確かなのか?」
「まあな。お行儀は良くないけど本人が仲の良い女子と話してるのを横から聞いていたからな!」マジか。もし和水の言ってる事が本当なら俺は告白するだけで良いって事になる。勝利確定だ。
「マジかぁ……。」
「じゃ、そういうことで。また明日。」
「おう。また明日。」
−−−−−−−−
少しばかり軽い足取りで教室に戻る。嘉島が俺を好きだってことをネタバレされたことは少しばかり残念だが、それ以上に自分の好意が相手に届くというのは何とも嬉しいものだ。ならば、腕にヨリをかけて恋文をしたためようじゃないか。そんな事を考えながら教室の引き戸を開けて教室に入ろうとすると、そこには……嘉島がいた。
「あっ……た、高森くん。えっと……お久しぶり……。」目に見えて慌てて居る嘉島の手にはさっきまで俺が書いていた、書きかけのラブレターがあった。
「驚きすぎだよ。今日も会ったばっかりじゃないか。」
「そ、そう……?」どこか紅くした顔で嘉島はおどけてみせた。
「そうだよ!……ところでそれ、読んじゃった?」一応、確認してみる。もう完全に読んでるし、宛名も書いちゃってるから自分に宛られたものだと気がついているとは思うけど。
「……うん。ごめん。勝手に読んだりして……。」顔を赤くしながら俯いて嘉島は答えた。なんか……かわいい。そう思ってしまった。
「べつに良いよ。後で嘉島にあげるつもりだったし。」これは俺の偽らざる本心だ。もっとも好きな子にあげるものだからもっとブラッシュアップをしてから渡したかったけど。
「……あの、お手紙読んだ後で何だけど、実は高森君に言いたい事があって、今良いかな?」
「ああ。何かな?」何が来るかわかってはいるが一応知らんふりはしておく。全部知ってるなんてネタバレはいくらなんでも無粋だろう。
「私、高森君の事が……好きです。お付き合い、してくれませんか?」
「もちろん。これからよろしく。」
「……うん。こちらこそ。」嘉島は紅いままの顔で笑顔を見せてくれた。俺はそれを見ると、更に好きになるのだった。そして、どちらともなく歩み寄って、そして抱擁しあった。
「……ねぇ、本当にいいの?人のお手紙を盗み読んじゃうような悪い女の子なのに?」どこか不安げな表情で俺を見上げながら嘉島は聞く。
「かまうもんか。」俺はただそれだけ言った。ただただ嘉島が愛おしいのだから。
お互い図らずもネタバレしあって告白に至った。けれど悪い気はあんまりしない。ロマンティックとは程遠いスタートだけどずっと続いてほしい。俺はそんな事を考えていた。
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