第44話 プチッ

「お、おい、ミラナリア、押さえてくれ、これ以上彼を刺激するな。すでに血管がバンバンに膨れ上がっているぞ。それ以上彼を怒らせれば死んでしまう。流石にそれはマズいんだ。」


流石の公爵もこれ以上やれば皇子の血管に負荷がかかり死んでしまうとミラナリアを抑えようとするが、そんなことは不可能なのだ。なぜなら、別に彼女は意識してやっていないのだ。これが彼女の素なのだから。


「はい?何を言っているんですか?私は別に事実を言っているだけですよ?あぁ、そう言えば私がどうして彼のことを豚と言ったかですよね。」


「いや、聞いてないよ。ものすごい嫌な予感がするから、頼むからこれ以上は何も話さないでくれ!」


公爵は嫌な予感が全快で働いていた。ミラナリアの婚約の際と言い、彼の嫌な予感は本当によく当たるのだ。公爵は必死にミラナリアを止めようとするも、彼女が止まることはない。


「良いですか、彼は先ほど自分のことをシュバイン皇子と名乗っていたのです!実はシュバインとは一見普通の名前にしか見えませんが別の意味があるんです。」


公爵の制止も聞かず、ミラナリアは自信満々にフスッと鼻を鳴らし、シュバインに関しての説明を始める。


「なんと、シュバインとは豚という意味があるんです!つまりこの人は自分で豚皇子と名乗っていたんですから!だからそんな子供の皇子に私は子豚ちゃんと言ったんですよ。


でも、自分で子豚を名乗るなんておこがましいと思いませんか?だってさっきも言いましたけど、豚はとってもムキムキな動物なんですよ。ぶよぶよのこの人がそんなムキムキの豚の皇子を名乗るなんて片腹痛いですよね。本当に笑っちゃいましたよ。」


「お、おい、頼むからもうやめてくれ、それ以上話すなよ。」


ミラナリアが解説を終え、そのマズさに公爵が冷や汗を流していると周囲から笑い声が聞こえ始める。


「くくっ、お、おい聞いたか。豚の皇子様らしいぞ。」


「えぇ、生まれた時から豚の皇子様なんてきっと両親はこうなることが分かっていたのでしょうね。」


「「「「「あはははっ、あははっ。」」」」」


笑い声の正体は先ほど、ここにいるシュバイン皇子に列を無理やりどけれられた住人達だ。彼らはミラナリアと皇子のいきさつを見守っていたが途中から面白い方向に話が転がってしまい、ついには笑いをこらえきれなくなったのだ。


笑いというのは全員がこらえている中、一人でも耐えられなくなってしまえばそれは瞬く間に広がってしまう。一種の連鎖のようなものだ。住人達も耐えられなくなってしまい、笑い声はまたたくまにひろがっていくのだった。


そんな中、ミラナリアと公爵の耳にプチっという嫌な音が聞こえてしまうのだった。

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