第35話 モコン国
とある国、とある街にて一人の男が息を切らしながら、とある建物へと向かっていた。
「くそっ!どうしてこのワシがこんな目に合わなければならないんだ!これもすべては無能な国王のせいだ!はっ、あんな奴、魔物のえさになっていい気味だ!
よ、ようやく屋敷が見えた。これでワシもこんな生活から抜け出せるぞ。こういう時のためにこんな何も無いようなモコン国のバウワ殿と仲良くしていたのだからな。」
そんな男はこの街で一番大きな屋敷へと足を踏み込もうとすると門番たちに止められてしまう。
「おい、ここをどこだと思っているんだ!ここは街の領主であるバウワ様が住んでいらっしゃる屋敷だぞ。お前のような汚い恰好をした浮浪者が一体何のだ!」
男は見るからに汚い恰好をしていた。そんな彼がこの街の領主の屋敷に足を踏み込もうとしているのだ。門番たちに止められないわけがない。
「お前たち、今すぐにワシをバウワ殿に会わせるのだ!」
しかし、男にとってはそんなことは関係ない。むしろ、どうしてこの門番たちが自分を止めているのかが理解できないでいた。
「何を言っている、お前のような輩を通すわけがないだろ。痛い目を見たくなければさっさと帰れ!」
「おい、貴様ら、このワシを愚弄するというのか!いいからさっさとここを通せ!」
いつまで経っても帰ろうとしない男に、門番たちはしびれを切らし、強制的に彼を排除しようとする。そんな彼らを止めたのは男の言うバウワ本人だった。
「お前たち、何を騒いでいる?静かにせんか、騒々しい。」
「申し訳ございません、このものがバウワ様に会わせろとの一点張りでして。すぐに追い払います。」
「私に会わせろ?ん?そこにいるのはメロロ王国の宰相殿ではないか!いったいこのような場所で何をされているのか?いや、その前によくぞ生きておられたな。魔物に国が滅ぼされたという報告を聞いて耳を疑いましたぞ。」
そう、ここにいるバウワを求めて訪ねてきたのは元メロロ王国の宰相その人であった。彼はメロロ国王が目の前で魔物の餌となり果てた際に彼を囮にして逃げだし、バウワのコネを頼るためにここまで苦労してやってきたのだ。
彼はとっさに逃げ出してきたために、金なども持ち出すこともできず、風呂にも入れず、ろくに飯も食べることが出来ずとひどい恰好をしていた。こんな彼を見て、バウワが宰相だと気づけたのは本当に偶然だった。
こうして、メロロ国の宰相はバウワに保護され、しばらくの間、彼の元で過ごすことになるのであった。
このことがモコン国にとって何をもたらすのかは誰も知らない。
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