第8話 屋敷とか掃除が大変なのでいらないです!
流石に、一国の国王に何か問題があると外部に漏らすのは問題だったのだろう。すぐに兵士たちのリーダーと思える人間が公爵を止めようとする。
「閣下、よろしいのですか!いくら命の恩人と言えど、部外者にそのような情報を漏らすのは。」
「いいんだ、この場合は彼女に協力してもらった方が我々も目的を果たすことができる。」
何やら二人がミラナリアの力を借りようと勝手に話を進めているが、そんなことを許可した覚えはない。ミラナリアが約束したのは彼らの命を助けることだけだ。
「一応言っておきますけど、私が約束したのはあなた方の命を助けることだけですので、それ以外は手伝いませんよ。」
「うっ、それは。・・・そうだ、報酬として屋敷はいらないか?王都に豪勢な屋敷があるから、そちらを報酬として差し出そう。」
公爵は妙案だとミラナリアに提案するが彼女にとっては興味をそそらなかったのだろう。
「あぁ、そういうのは要らないです。屋敷なんて貰っても掃除は大変ですし、維持費も馬鹿にならないですからね。コスパ悪すぎです。」
「おぃ~!王都にある、それもかなり大きな屋敷だぞ、それがいらないとかどうかしているぞ。」
普通であれば喜んで引き受けるような好条件であるにもかかわらず、ミラナリアが断ったことに公爵は思わずツッコんでしまう。
「いや、だって邪魔じゃないですか?そんな不便なもの、貰っても嬉しくないですよ。」
「はぁ~、そういえば君はそういう性格だったな。出会ってからわずかしか経っていないというのに、なんとなく君の性格が分かった気がしたよ。
じゃぁ、聞かせてほしいのだけど、君の望みは何だい?これでも公爵だから大抵のことは叶えられると思うのだけれど、何か言ってみてくれないか?」
ミラナリアの要望など前世の記憶を取り戻したときから決まっている。彼女は盛大な野望を公爵たちに大声で暴露する。
「私は、一生分の大金を若いうちに稼いで余生を怠惰に過ごしたい!」
そんな、拍子抜けした彼女の要望に公爵はおろか、周囲で二人の話に耳を傾けていた兵士たちもおいっ!と心の中でツッコんでしまう。
「そ、そんなことでいいのかい?もっと領地が欲しいとか、貴族になりたいとかないのかい?」
「えっ?そんなの要らないですけど?あっ、でも怠惰に過ごすというのは不労取得であれば大歓迎ですよ。労働するのが嫌なので、ほとんど何もしないでお金を稼げるなら大歓迎です。」
「そ、そうか。さっき、君のことを理解したと言った言葉は取り消したほうが良いかもしれないな。今の話を聞いて、ようやく君の本心を理解できたよ。
そう言うことなら、私の頼みを聞いてくれれば君の願いを全部叶えてあげることができるのだけれど、話だけでも聞いてみないかい?」
先ほどの屋敷の話の時とは一転し、ミラナリアは強い興味を示す。
「ほほぉ、それは聞いてみる価値がありそうですね。ぜひ、お聞かせ願いますか?とりあえず、周囲の魔物たちが邪魔なので結界を張ったまま、森を抜けましょうか。話はその道中にということで。」
「問題ない、すでに傷を負った兵士たちも回復しているからね。」
ミラナリアを含めた貴族一行はサクラ王国の王都に向けて動き始めるのであった。
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