最凶のリゾート
第55話 「キスしたから」 「「え」」
「今朝、クロウとキスしたわ」
「「え」」
海岸沿いのオシャレなカフェ。
トロピカルジュースに入った氷がカラン、と鳴ったと共に同席していたフェルとロフィアから戸惑いの声が漏れる。
「それは……ほっぺにでしょうか?」
「口によ」
「もちろん一回だけだよね?」
「数え切れないほど」
「「……」」
フェルとロフィアは黙る。
そんな2人の反応を楽しむようにルルシーラはトロピカルジュースを口に含んだ。
「抜け駆けしようとルル様から提案されましたが、流石にここまで飛ばしてくるとは思いませんでした」
「フェル、怒ってる?」
「怒ってませんよ? クロウ様のファーストキスを取られたのは悔しいですが、昨日、厄介な人に絡まれていた時、クロウ様が助けにきてくれました。『フェルは僕のモノだ』と抱き寄せられて言われましたので平気です」
なお、話を大袈裟にしている模様。
「へぇー」
「ええ!? お姉ちゃんだけ何もされてないよーっ! ずるいよ〜!」
バンバン、と羨ましそうにロフィアがテーブルを叩く。
「ずるい! ずるい!」
「ロフィア、貴方はサキュバス国の時にクロウと2人っきりでデートしたでしょ」
「あんなのデートじゃないもん! すぐに邪魔されたし! いいもんっ、お姉ちゃんもクロウちゃんにアプローチしていい事してもらうもん!」
「ロフィア様に火をつけたようですね、ルル様。ところで、昨日は提案に首を突っ込まなかったですが、何故、いきなり抜け駆けしたいと言ったのですか?」
『僕はギルドを抜けるよ』
ルルシーラは昨夜、面と向かって言われたことを思い出す。
冗談で言われたことが本当になった。予防線としての誘惑作戦がどうしようもなくなったが……。
「まぁ、気まぐれよ。それにいつまでも同じままだと面白くないじゃない」
「なるほどー! じゃあお姉ちゃんも抜け駆け頑張るーっ」
「私もクロウ様の焦った表情、見てみたいです」
きゃっきゃっと盛り上がる2人を優しげな瞳で見守るルルシーラ。
クロウがギルドを抜ける、と決意したことギリギリまで黙っておくことを決めて。
ルルにキスされた。
キスされたのだが?
………ほぇ?
「ん、マスター」
くいくいっと右からアリーが腕を引く。
「にぃに?」
くいくいっと左からユマが手を引く。
「ん、どうしたのボーして」
「具合でも悪いの、にぃに?」
「な、なんでもないよ」
いかんいかん。ロリ組にキスされて動揺したことがバレたらなんと言われるか。恐らく「嘘だ! 妄想抱くな!」って言われそうだけど。僕にキスするのはルルくらいだろうし……。
「さて、どこから行こうか」
こほんと咳をして気を取り直す。
腕輪のスクリーンから地図を表示し、眺めていた時、背後から声をかけられた。
「あら、貴方たちもここに来ていたのね」
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