第32話 パンティーくんは今頃何をしてるのだろう

 魔物を狩りまくり……というか、奥に進むほど魔物の死骸が増え、サクサク奥地に進めた。


 そして行き止まりの広い空間に出る。


「終わり……でしょうか?」


「こういう何もない空間に限ってとんでもないものが出るよ」


 ゴゴゴゴゴゴ


 突然の地響き。何かと思えば目の前の巨大な岩が動き出し、姿を現す。


 ゴーレムだ。

 4m近くある身長。全身が硬い岩でできており、迫力が凄い。


 どうやら僕たちのことを敵と判断したようだ。


 巨体から溢れ出す威圧感に、3人が息を飲む。


「こ、こんなの倒せますかね……」


「大丈夫だよ。ただの石ころだし」

 

「い、石ころ……!」


 頼むからそんな「かっけぇぇぇぇ」みたいな視線向けないで。照れるから。


 早速、ゴーレムが攻撃を仕掛けてきた。

 魔力がゴーレムの口部分に集まり、ビームを放つ構えを見せる。



 そして、放った。

 

「よっ」


 そのビームを僕は斬る。


「うぇぇぇ!?」


「さっ、みんな早く倒そう。ビームは僕が斬るから怖がらず突っ込んでいいよ」


「は、はい!」


 攻撃さえ封じちゃえばただの石ころだよね。いい練習相手だ。






「依頼終わりました」


「お疲れ様でした」


 受付のナーシャさんに報告しているカイトとメル。その様子をギルドハウスに併設された酒場で見守る。


 移動時間も含め、ギルドハウスに着く頃には夕方になっていた。


「クロウさん、明日もよろしくお願いします!」


「うん、よろしくね」


 動きもスムーズだし、依頼の難易度をあげてもいいぐらいだ。


 あとすごく素直。教え甲斐がある。と言っても何も教えてないけど。


 話題も尽きたし、今度は僕から振ってみた。


「シイハってパンディーくんの事、好きだよね」


「っ、うぇ!? そそそんな事は……!」


 凄くあわあわしてる。分かりやすい反応だ。


「2人には内緒にしとくから話してくれない?」


「え、あ……」


「頼む。ギルドの人間関係を把握しとくのもリーダーの務めかなと思って」


 人間関係は複雑でアレだったけどね。恋愛話は好きだ。僕には無縁だけど。


 分かりました、とシイハは声を整え話し始めた。


「私たちは幼馴染でギルドを結成したと言った通り、私たちは幼馴染なんです。その中でもパンディーとは付き合いが長くて」


「ほうほう」


「昔から勝ち気でヤンチャで……でも正義感は人一倍強くて、子供頃の私はそんな彼に何度も助けられて、それで好きになっていったというか……」


「なるほど」


 要するに昔から助けてくれた幼馴染のことを好きになったと……ラブコメ主人公かな?


「周りに強いとチヤホヤされすぎて今はああですけど……」


「あー……」


 寝取り系主人公かな?


 パンティーくん、実力はあるからもう少しおとなしくなればいいと思うんだけどなー。


「にぃに!」


「ん、あれ? ユマだ」


 聞き慣れた声がしたと思えば、駆け足で近づいてくるユマ。その後ろからロフィア、ラフィア。他のメンバーはどうしたのだろうか?


「お、っと」


 勢いよく抱きついてきたユマを受け止める。


「ロフィアもラフィアもどうしたの?」


「依頼が終わったので報告に来たんですよ」


「臨時リーダーの姿が見当たらないけど?」


悪魔の凱旋ナイトメアのリーダーはクロくんだよ〜」

 

「あんな横暴で自己中な方はリーダーと思ってないので」


 あ、はい察しました。そういう事ね。


「臨時リーダーの教育もほどほどにするんだよ。絶対生きて返してね」


「うちのリーダーが迷惑かけてすいませんっ!」


「ううん。リーダー交換会が終わるころにはきっといい子になってるわ〜」


 満面の笑みのロフィア。うんざりしたような顔のラフィア。そしてやけに甘えてくるユマルマ。


 パンティーくん、やりたい放題して女性陣の怒りを買ったんだね。僕たち男3人が女性陣の尻に敷かれてるって気づかなかったのかな?


 パンティーくんは今頃何をしているよだろう。死んでなければいいけど。



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