第31話 【パンディーside】早くゴールして女どもを犯してやる……

「始めるって何をだよ……」


「貴方が〈廃沼の迷路〉から脱出できるかよ」


 発言からして、俺を置いていくのだろう。


「こんなところで油売っていいのか? 俺たちにはこなさないといけないものがあるだろ……?」


「貴方とこなすものなんてないわよ、頭狂ったのかしら?」


「依頼だよ、依頼だよっ! ゾイズさんから割り振られた依頼を達成しないといけないだろうがッ!!」


 リーダー交換会では配属された依頼を必ず達成するようにと言われた。


 数あるギルドの上位に君臨する悪魔の凱旋ナイトメアには実力相応の高難易度の依頼が舞い込む。

 

「そんなものユマルマ、ラフィア、ロフィアの3人で十分よ」


「くうう……」


 確かに悪魔の凱旋ナイトメアなら少人数でもあっさりとこなしてしまう。


 パンディーはここから自力で脱出する他ないのだ。


「あと5分くらいすれば痺れも取れていつも通り動けるようになるわ。生き残れるといいわね」


「ちょっ……!」


 アリーシャ、フェル、アルマリア、ルルシーラが次々に奥へと消えていく。


 パンディーも追いかけようとしたが、痺れで身体が思うように動かず、豪快に地面に倒れ込んだ。


「クソぉ……ぜってぇ許さねぇぞ……」






 完全に痺れがなくなったパンディーは〈廃沼の迷路〉 を1人歩く。


 ……ここを抜けたらすぐに犯してやる。


 そんな事を思っていると、目の前に魔物が現れた。

 

 ——スライムだ。

 

「けっ、なんだよ。脅かしやがって……」


 八つ当たりするように、ひと蹴り。プチャ、と潰れスライムは動かなくなった。


 そこからどれだけの時間を1人で歩き回ったのだろう。パンディーの顔がますます険しくなっていた。


「ああ、クッソ。こういう迷路系は大っ嫌いなんだよ……」


 どんなに歩いても石造りの同じ景色。変わらない景色と一向にゴールに近づく気配がないことで、さらに鬱憤が溜まる。


「……オオオ……オオオ……」


「っ……!」


 魔物のうめき声にパンディーは咄嗟に息を止める。


 なんの声だ……? この角に何がいる?


 恐る恐る覗くと、猫背の魔物がいた。


「あれは……グールか?」


 グール。またの名を食屍鬼しょくしき

 ゴムのような弾力のある皮膚を持ち、二足歩行だが前屈み。醜い容姿で、泣くような掠れた声で迫ってくる。食料は動物の死骸や排泄物、それと人間の死体と言われている。


「オオオ……オオ……」


 奴らはしぶといのでここで余計な体力を使いたくない。


 幸いまだこちらには気づいていない。素早く走り抜ければやり過ごせるだろう。


 そう思い、反対側に逃げようとしたのだが……。

 

「うわああっ!!」

 

 突然、足を絡めとられて転んでしまう。見ると、左足首から先が、ヌルッとしたものに……スライムの中に沈んでいた。


「クソぉ! こんな雑魚にッ!」


 スライムは初心者が相手にするよな魔物。

 冷静になれば子供でも簡単に払えるものの……この時のパンディーは、焦っていたこともあって、中々抜け出せない。

 それでもなんとか抜け出そうと、乱暴に足を振り回すが……逆にスライムに両足ごと絡めとられてしまった。


「……オオオ……オオオ……」

 

「っ!?」


 大声をあげてしまったがため、グールが方向を変え、パンディーの方に近づく。

 

 ……まずい、こんな序盤からやられてたらゴールまでたどり着くのにどれだけかかるのか……。


「このっ、離せ! クソクソクソクソクソクソクソ!!」


 早く脱出しようと足をバタつかせる。

 しかし脱出できるどころか、怒ったスライムに、両足を恐ろしいほどの力で締め付けられた。

 まるで足が、雑巾のごとく捻り潰されるように。


「あぐッ!?」


 ……あ、足が潰されるッ。


 スライムは魔物の中でも最弱。子供でも倒せると言われている。

 だがそれは、捕まる前に倒せばの話。

 一度捕まれば、ヌルヌルとした体液が身体中にまとわりつき……中々離れない。


「このッ……くそがぁぁ!! はっ」


 なんとか剥がし、蹴飛ばしたが——スライムに夢中で気づていなかった。


 グールが手に持ったナイフを振り下ろしたことに。


「あぐぅぅぅ、痛いぃぃぃい!!!」


 手の甲にナイフが突きつけられる。


 一瞬、パニック。

 このまま殺されるのではないかという恐怖が頭をよぎる。


「っはぁ! オラッ!!」


 だが、彼も中々の実力を持つ冒険者。


 冷静になり、刺されたナイフを奪うと、グールの顔面にブッ刺した。

 

 この程度で倒せばしないが、隙は充分作れた。

 距離を詰め、大剣で斬るには充分な隙だ。


「死ね死ね死ね死ね死ね死ねッッッ」


 斬って、斬って、斬りまくる。まるでストレスを解消するように。

  

 やがてグールは動かなくなった。


「はぁ、はぁ……俺としたことが〈廃沼の迷路〉ってことで臆病になりすぎたぜぇ……。化け物にさえ会わなければ後の魔物はどおってことない。アイツらも同じ状況なんだ。せっかくならゴールで待ち伏せておくのもいいな、クックック……」


 考えるのは先にゴールについて、到着したメンバーを順に犯しまくること。

 

「クヒっ、クヒヒ……」


 だらしない笑みを浮かべながら、足早で進む。


 この前向きな姿勢はいつまで続くのやら?








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