第57話 安心安全の賭博(バトルロイヤル)

賭博バトルロイヤル?」


 ますます意味が分からず首を傾げる。


「詳しい説明は私じゃなくてスタッフに聞くといいわ」


「お呼びになりましたでしょうか」


 シュバっと現れたスーツ姿の男性。サトダさんだ。


「呼んでないけど……お願いします」


「はい、ではご説明を。オルフェンリゾートでは、お客様の癒しとなるよう、最高級のサービスを心掛けています。ですがその分、代金を下げたりすることはできません」


「ほうほう」

 

「ですので、この賭博バトルロイヤルシステムを導入しました」


 うん……ですのでその発想にいくのね。


賭博バトルロイヤルの仕組みは至って単純でございます。一対一の対決、あの円状の舞台から落ちれば負けです」


「負けたらなんか罰ゲームがあるとか?」


「罰ゲームではありませんが……滞在期間がゼロになります」


「ほう?」


「例えばクロウ様は一週間の滞在権利をお持ちです。ですが、もし賭博バトルロイヤルで敗北してしまうとその滞在権利は相手に渡ります」


「つまり、僕の一週間いれる権利が相手に渡って僕はここにいれなくなるってこと?」


「そういう事です。賭博バトルロイヤルは連勝するほど滞在期間が伸びます。一週間の権利を持つ相手に3回勝てば3週間……と。この賭博バトルロイヤルはいわば、下剋上のチャンスでございます」


 確かにお金持ちの人が滞在期間が長いってのは一目瞭然。そんな相手に勝ち続ければ一緒リゾート暮らしも夢じゃないね。


「ちなみ滞在期間、1日以上から賭博バトルロイヤルの参加権が得られます。つまりは最低15万円はお支払い頂かないと……」


 高いけど一生住めるチャンスがあるって考えれば安い方かぁ……。


「それと試合ですが、どちらかが不利、有利になるといけないので私たちが正当にジャッジしております。お金を積まれても絶対に揺らぎませぬ。また、回復魔法を使える者を配置し、怪我人を出さない安心で安全な賭博バトルロイヤルを開催しています」


 このリゾートにいるスタッフだけでS級魔物とか倒せそうな勢いなんだけど。


「ちなみプレミアムチケットをご利用のクロウ様一行とヤリマー様一行は4日間の拒否権が与えられます。ただその日のうちに1回でも勝負を受けてしまうと、その1日は賭博バトルロイヤルに参加している状態になります。つまり相手から勝負を持ちかけられたら受けなければなりません」


「もしかしてそのお休み権があるからプレミアムなの?」


「左様でございます」


 嬉しいような嬉しくないような。

 人を選ばず誰にでも最高級のおもてなしをするのはいいことかもね。


「おや、ちょうど終わったようですね」


 サトダさんに釣られて視線を向けると、さっき試合していた人とは男がこちらへ歩いてきた。


 多分、勝ったのだろう。顔がドヤ顔だから。


「これはこれはジン様。本日も連勝おめでとうございます」


「おうよ。スタッフよ、俺の連勝記録を言え」


「はい、449勝0敗でございます」


「ハッハッハッ、聞いたか小僧。これがオルリゾの主だ。そして俺の名は〈無敗のジン〉こと、ジンジベル様だ!」


 聞いてないのになんか絡んできたんだけど。ジンジベル……ジングルベルと紛らわしいな。


「俺はなぁ、前のギルドで無能と貶され追放されたんだよ。だがアイツらは今頃後悔しているはずだ。俺という超有能を手放したことに。俺の能力は『なんでも下ろせる』だ。これはなぁ、一見パッとしないが、超超ちょーーチートなんだぜ! 俺はこれでオルリゾに1年も滞在している。つまりは名だたる強者をぶっ倒してきてるんだよっ! 誰も俺に勝てない! 誰も俺を止めることができない! ハッハッハッ!!」


 誰も聞いてないのに長々と説明された。しかも自慢話だし。


「どうだ小僧! 幸運なことにこの無敗のジンと出会えたのだから勝負しないか? 勝てば俺の滞在期間が渡るぞ!」


 まだ僕は何も発していないのに一方的に勝負を申し込まれた。


「にぃに、ユマたちと遊ばないの〜?」


「もちろん遊ぶさ。だからそんなに泣きそうな顔しないでユマ」


 ユマの頭をよしよしと撫でる。


 さて、どうしたものか。拒否権があるなら是非とも使うが。


「ヤリマー、この人と勝負する?」


「嫌だけど、そう提案するってことは何か勝算があるってことね」


「まぁあるにはある」


「ほう、この無敗のジンに勝つ気でいるとは……。ハッハッハ、その勝負受けてやろう!!」


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