第26話 リーダーたちの集まり

 ギルドリーダーとギルドマスターの違いについて説明しよう。


 ギルドリーダーは冒険者団体、ギルドの創立者が主になる。


 ギルドマスターは、何百もあるギルド組織のまとめ役で、主に事務作業をしている。事務作業というのは依頼などを達成した数、功績をまとめ、各ギルドがどれくらいの実力を持っているのか把握する。

 だからギルドごとに実力に適した依頼を出せるんだよなー。




 一週間後。

 各ギルドのリーダーがギルドハウスに集められていた。


 今回はギルドリーダー以外、立ち入り禁止。途中までついてきたフェルは入り口で足止めを食らっている。


「よぉ。仮面野郎」


「あ。パンティーくんだ」


「だからパンディーだっつーの!」


 茶色の短髪に荒っぽい口調。背中には大剣。


 パンディー・エイト。

 ギルド『百獣の大剣ビースト・デュセス』のリーダーで、そこそこ強かった気がする。


 お決まりのやり取りを終えたと思えば、パンディーくんやニヤリと口角をあげて。


「サキュバス国でやりまくりだっただろ?」


「はい?」


「やっぱりそうだよなー。お前みたいに日頃からギルメンとやってる奴が、サキュバス相手に手を出さないはずがないんだよなー。んで、何人とやったんだ? もしかしてクイーンサキュバスとも……」


「僕は和解交渉しただけだけど?」


「嘘つけっ。お前みたいな奴でもセックスしてくれるサキュバス相手に何もしないで帰ってくるはずないだろっ」


 僕がブサイクなことは認めるけど、パンティーくんに言われると腹立つ。


 ガルガとホルスがサキュバスに囲まれている中、1人ポツンとしていた光景を思い出すなー。

 あー、これが虚無かー。


「正直に言えよ。そしたら広めるのやめてやるからよ」


 それ、絶対広める人の口調じゃん。


「——そう言った話をここでするのはやめてもらおうか」


「あ? チッ、アンタか……」


 不機嫌顔だったパンディーくんが一瞬で怯んだ。


 現れたのは女性。


 セリス・オルフォード。

 ギルド『赤薔薇ローズ』のリーダーにして、女性から圧倒的な支持を受ける。

 艶やかな金髪のウルフカットに茜色の瞳は一見、厳しいながらも優しさを含んでいる。

 鎧を纏った格好ながらも美しさと風格を兼ね備えている。

 実力もある。

 そんな彼女に憧れている冒険者は多くいるだろう。

  

 セリスの登場に周りが騒がしくなる。

 注目もより集まった。


「クロウがそんな事をするはずがないだろう。それ以上言うなら私が相手するけど?」


「ケッ……」


 パンティーくんは悔しげに言葉を漏らし、僕から離れていった。


「ありがとうセリス」


「気にすることないさ。クロウは私の可愛い弟みたいな存在だからね」


 と言いつつ、ぽんぽんと頭を撫でられた。


 この人は絶対に敵に回したくないので、ひたすらいい子でいようと心がけている。


「そういえば、セリスはこの前のギルド会議にいなかったけど、何してたの?」


「別件でドラゴン退治をしていてね」


「えっ、ドラゴン退治!」


「ふふ。その様子だと内容が気になるようだね。この集まりが終わった後で話してもいいよ」


「やった!」


 しばらく話をしていると、僕らを集めたゾイズさんが現れた。


「諸君、今日は集まってくれてありがとう。今回集まってもらったのはとあるイベントのためだ」


 イベント?と皆、疑問げに言う。


「うちのギルドハウスはザーン率いる『逆境の絆スノードロップ』セリス率いる『赤薔薇ローズ』そしてクロウ率いる『悪魔の凱旋ナイトメア』この三大勢力を主軸としている。だが、一方でギルド内で実力差がありすぎる」


 こほんと咳をつき、言葉を続ける。


「そこでギルド全体の向上のために——ギルドリーダー交換会を開催する。他ギルドの教育方針を体験するのも何かと勉強になると思ってな。異論は認めん。これは決定事項だ」


 ゾイズさんの宣言にリーダーたちがどよめく。そんな中、セリスが手を挙げた。


「ギルドマスター。少しよろしいでしょうか?」


「なんだ、セリス」


「その案には賛成ですが……。私のギルド『赤薔薇ローズ』は女性のみで構成されています。中には男性恐怖症の者も……。なので臨時リーダーになるのは女性で希望したい」


「俺は仮面野郎のギルドに入るぜっ。あのギルドのリーダーは俺こそふさわさしいと証明してやる」


「お、俺もクロウのところがいいっす!」

「私はセリスさんのところがいいです!」

「僕はザーンさんのところ……!」


 セリス、パンティーくんに続き、他のリーダーたちも口々に入りたいギルドや希望を言う。

 

 これじゃいつまで経ってもまとまらなそうだ。


「あの」


「クロウ、お前もか?」


「僕は別に希望とかないんですけど……配属するギルドはくじ引きでいいじゃないですか?」  


「……そうだな」


 このままだと決まらないと思ったゾイズさんも首を縦に振った。


 ギルド名が入った紙を四つ折りにして、箱に入れていく。抽選箱の完成だ。後はこれを引くだけ。


「それじゃ、順に引いていけよ」




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