第16話 サキュバスフェスとはこういう事?
「ここからは自由行動にしましょう」
大広場に着いた僕たちは、ルルの提案で自由行動をすることになった。
当然、こんな美男美女軍団から離れ、一人で行動したいのだが……。
「〜〜♪」
「ん?」
「ぎゅ〜〜♪」
「んん?」
「クロウちゃん〜〜♪」
「んんん?」
いつも間にか僕の腕にはロフィアがくっついていた。
「ロフィア?」
「どうしたのクロウちゃん?」
「なんで僕の腕にくっついてるの?」
「うーん」
「うーん?」
「クロウちゃんのお姉ちゃんだから〜」
そんな満面な笑みで言われても。僕とロフィアは血が繋がってないし、理由になってないと思うし。
「自由行動だよ?」
「うん」
「僕、1人で行動したい」
「クロウちゃん覚えてる?」
「えっ、無視された。何を?」
「前にお姉ちゃんの言うこと、なんでも聞くって言ったこと」
「うん、覚えてないね」
「覚えてるよね……?」
「嘘です覚えてます」
凄い満面の笑み&ドス黒いオーラで近づかれたので思わず即答する。
「それを——クロウちゃんと2人っきりでデートする権利に使いまーす!」
「もったいなっ」
もっといい使い方なかったの? こんな不細工な僕とデートして何になるのか分からないが、また面倒なことになることを防ぐため、指示に従う事にした。
どこかお店に寄ろうかと話していた時だった。
「あのぉ……」
「あ、君は」
現れたのは、僕に紙をくれたか弱そうなサキュバス。
またとぼけてもいいけど、ここまで露骨にアピールしてると、バレバレだよね。
「これをぉ……」
今度は飲み物を渡そうとしていたが、
「————
それは僕の手に渡る前にロフィアが出現させた刀によって斬られた。
【天十握剣】
日本神話に登場する武器で、一太刀で海を2つに割ることも可能と言われるほどの強力な破壊力を秘めているとされていた剣もとい刀だ。読み方は僕と同様、カタカナの方が格好良いからだ。
ロフィアはこの刀の他にも天叢雲剣、布都御魂以上三つの
「ひっ……」
手にあった飲み物をいきなり斬られ、悲鳴をあげるか弱そうなサキュバス。
「ねぇそれ、何か仕込んであるでしょ……?」
ロフィアは真顔でか弱そうなサキュバスの首元に刃を突きつける。
「ロフィア、ロフィア。一応ここ、人前だからむやみに刀を出さないで」
「一体なにを考えてるの? クロウちゃんをどうするつもり? ねぇ、クロウちゃんがお人好しでもやっていいことと悪いことがあるよね? クロウちゃんに何したいの? したらどうするの? クロウちゃんに何かあったら許さないよ? クロウちゃんに、クロウちゃんに……」
全く聞く耳を持たない。
しょうがない。あの手でいくか……。
「ロフィア好きだよ」
「もしクロウちゃ————うん♪お姉ちゃんも好きだよ♪」
切り替えが早い。僕に好きとか言われて喜ぶの、このギルドのメンバーだけだからね? おかしいよこのギルド。
「僕が話を聞くからロフィアは刀をしまって大人しくしてて」
「分かった〜。ぎゅ〜♪」
で、どうして僕の腕にくっついているのかな?
「君、さっき僕にこの紙を渡してくれた子だよね」
「えっ、あっ……」
「やっぱり男の僕を狙ってるの?」
「そ、そんなこと———」
「この紙を渡した時点から怪しいとは思ってたよ。紙から微量の魔力を感じたから何か仕掛けてると思った——」
僕がそう言い終える前に、鬼気迫る表情で別のサキュバスが鎌を持ち、襲ってきた。
「————
振り下ろされた鎌は僕たちに届くことなく、ロフィアの刀によって真っ二つにされた。
「なっ……!?」
鎌を真っ二つにされ、驚愕するサキュバス。
「くそッ…男だけでも……」
「多少の傷はつけてもいいわッ!」
今度は背後から2人のサキュバスが自分の背丈より高い鎌を僕に向けて振り下ろしてきた。
「————
まるでスローモーションようなその動きを最小限の動きでかわし、その鎌目掛けて剣を振る。
「なっ……!?」
「そ、そんなっ……!?」
僕の剣はいとも簡単にその鎌を真っ二つにした。
「サキュバスフェスってこういう事?」
サキュバスフェスとはサキュバスに囲まれて攻撃されることを指すの? 全然嬉しくないね。
僕とロフィアを囲うように続々とサキュバスが集まってきた。ざっと見ただけでも20人はいる。
「おっ、なんだなんだ?」
「いいねー。頑張れー!!」
観光客は、サキュバスたちが恐ろしい鎌の武器を持っているというのに、なにかのショーと勘違いしているのか、冷静だ。事前にこういうこともあると説明してるのだろう。
どうやら狙いは僕たち……いや、男の僕にあるようだ。
「……クロウちゃんに手を出す人は許せない。ここは少し、本気でいくわ」
ロフィアの口調が変わった。
戦闘に入るとあのノホホーンとした状態から一変してクールな状態へと変わる。僕はそれを剣士モードと呼んでいる。
「一斉にかかれッ!!」
「きたよっ!」
襲いかかってくるサキュバスの鎌を真っ二つにしたり、サキュバスは腹部に峰打ちし気絶させたり、少なくとも殺さない程度に蹴散らした。
だが、目の前のサキュバスと観光客を守ることに気を取られ、サキュバスが魔法を発動させている事に気がつくのが遅れた。
「———ランダムムーブ」
距離があるところで、杖を持ったサキュバスがそう唱える。
僕とロフィアの足元に魔法陣のようなものが現れた。
「転移魔法か……」
転移魔法とは通常は特定の場所へ移動できる魔法なのだが、今唱えたのはランダム。どこに移動するか分からない。
おそらく最終手段だろう。
魔法陣内に入ったら抜け出せないというのが鉄則だ。抜け出せはないが、身体の一部は外部へ出せる。
「ほい」
「えっ……」
僕はあのか弱そうなサキュバスの手を引き、魔法内に連れ込んだ。そして、そのまま眩い光に包まれた。
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