ユメカナっ!イベントストーリー

黒羽冥

赤いきつねと緑のたぬき

ある日テレビを見ていると…あの馴染みの『赤いきつねと緑のたぬき』のCMが放送されたんだ!!

「見ろよ!みら?あの商品、異世界にも進出したのか?」

らいとは驚いてる僕の目の前で声を上げた。

「本当だ…この世界にもあるんだね……。」

僕も呆然として答えていると…ふと…元の世界の事を考えていたんだ…。

僕の家は両親と僕の三人家族、両親は共働きで一人暮らしのような生活だった。引っ込み思案で友達もいなかった僕は『らいと』という大親友に出会えたんだ。そんな昔の事を考えていると僕達の出会いを思い出したんだ……。

小学校時代の僕は地元の友達もいて人並みに楽しい学校生活を送っていたんだけど中学に入る前、両親の仕事の関係で引っ越し知らない土地の中学に通う事になったんだ。中学にあがると知り合いもいない友達作りも苦手な僕は気がつくと一人孤立していた。いつしか僕は虐めにあうようになり毎日が辛かった。そんな僕は物語を書く事が好きで書いてる時間だけは楽しかった…。

ある日の事 物語を書こうと用意していると誰かが僕を呼ぶ。

「みらい…何してんだよ!?」

声をかけてきたのは苦手な剛君だった。

「な…何でもないよ…」

急いでノートを机の中にしまおうとすると後ろから剛君の仲間にノートを奪われてしまった。

「返してよ!!」

叫んでも返してはくれない…周りで僕達の事を見ていた同級生達は知らん顔だ…。

そんなやり取りをしていると教室に先生が入ってくる。

「お前達!何騒いでるんだ?」

僕はすかさず取り返し席に着くと剛君はチッと舌打ちをして自分の席に座った。

「お前達…今日は転校生を連れてきた。皆仲良くするように!」

先生はそう言うと転校生に声をかけた。転校生は無愛想な顔をして教室に入ってきたんだ。僕の見立ては身長は僕と同じくらい、髪は銀髪、目は二重で鋭く獲物を狩るような目をしていて身体はガッチリして僕とは正反対の身なりをしている。先生は彼を隣りに立たせ紹介をする。

「えー…両親の関係で今日からこの学校に転校してきたらいと君だ。皆よろしく!」

先生が紹介すると僕は彼と目が合いドキドキしてしまう。僕が緊張していると女子は彼を気に入ったようで黄色い声をあげてる。彼は退屈そうな顔をして窓の外を見ると先生は挨拶をするように言うと。

「転校してきた黒闇らいとだ…。」

挨拶をすると先生は空いていた僕の隣の席に座るように指示をする。小動物の様な僕が猛獣の様な眼の彼にドキドキしていると彼が隣りの席に来て座る。

僕は緊張していたけど思い切って挨拶をした。

「初めまして…僕は南雲みらい。よろしくね」

挨拶をすると彼は一瞬驚いた顔をしたんだ。その驚きの表情が不思議に思い僕は声をかけた。

「えっ?どうしたのさ?」

僕の質問に彼は首を横に振り座り直すと沈黙した。それから徐々に僕は彼と色んな事を話すようになったんだ。

そしてある日の休日、近所の公園でブランコに座りながら物語を書いていると近くで声が聞こえてきたんだ。

「あ~腹減った……。」

どこかで聞いたような声はブランコの近くにあった土管の中から聞こえてきた。すると中からゴソゴソ人が這い出てきた。どこかで見たようなその人はあのらいと君だったんだ。

「あれっ?らいと君?」

僕の声に彼は周りを見回し僕を見つけて声をかけてくれたのでした。

「あれっ?南雲か?どうしたんだ?」

彼は笑顔で僕に話しかけてくれた。

僕は嬉しくなり話そうとすると彼のお腹がぐぅーっと鳴ったんだ。

「お腹……空いてるの?」

話を聞くと彼は施設出身でバイトをしながら生活をしてきたみたいで空腹の時もよくあるそうだ。

「じゃあ……僕についてきて!」

僕は彼を家に招待した。家には両親は仕事で居なくて台所を探して出てきたのは…なんと!『赤いきつね』と『緑のたぬき』でした。

僕はお湯を入れた二つのカップ麺を手に部屋に戻ると彼は僕の書きかけの物語を食い入るように読んでいたのでした。

「らいと君?」

声をかけると彼は真剣に読んでいて僕に気づかないほどでした。

「らいと君!?」

二度目の声で彼は気づき笑顔を向けた。

「らいと君は赤いきつねと緑のたぬきどっちが好き?」

僕は両方好きで決められず彼に聞いた。

「お…俺は……」

また彼のお腹はぐぅーっと鳴る。

僕は彼にどちらか選んでもらえるようテーブルにカップ麺を置くと彼は僕に手を合わせると食べ始める。麺を啜る彼はあっという間に赤いきつねの麺を食べきり最後はつゆを吸ったお揚げを熱そうに食べて完食すると緑のたぬきを見つめていた。らいと君は本当に食べれてなかったんだろうな…僕の分も薦めると彼は驚いて僕を見ていた。

「お前の分……も…良いのか?」

僕が頷くと彼は手を合わせて緑のたぬきを食べ始め麺を激しく啜る音を立てた。残った天ぷらをサクサク食べると汁を飲み干し完食した。

「ごちそうさま!ありがとな!みら?助かったぜ!」

彼は赤いきつねと緑のたぬきで身体も温まり僕も彼の笑顔に心が温まった。みらってらいと君が親しげに呼んでくれた事が嬉しいな…。

「みらいは呼びづらいからみらでいいだろ?」

笑顔の僕。満足そうな彼は復活したみたいだ。

「俺、久しぶりにこんな美味いもの食ったぜ!生き返ったぞ!ありがとなみら!」

彼はまたお礼を言うとさっきまで読んでいたノートを返してくれた。僕はノートを受け取り抱きしめると彼に話したんだ。

「僕さ…昔から一人でいる事が多くてさ…それで物語を書いたりする事が多くて……」

彼に僕の事を話した。

自分がマイナス思考だから友達が出来なかった事、物語を作るのが大好きな事、そしてらいとと友達に……。もっと話したかったけど彼のスマホが鳴り彼はお礼を言い急いで帰って行きました。

次の日僕が教室で物語を書いていると…

「おい!」

嫌な声がして恐る恐る振り返る。そこにはらいと君が転校してきてからなりを潜めていた僕の苦手な剛君達三人が立っていたんだ。

「おい!みらい!?ちょっと来いよ!」

剛君に呼ばれた僕は屋上へと連れていかれたんだ。

「剛君…僕に用って何…かな…?」

三人は僕を取り囲む様にして睨んでいる。すると剛君が口を開いたんだ。

「最近転校してきたらいと…か?お前の友達か?」

僕が友達になってくれた彼の事を言いたくなくて黙っていると剛君は続けた。

「俺は、ああいう奴が大嫌いなんだよ!あいつを友達って言ってる奴は…」

剛君は僕の胸元を掴むと声を上げた。

「潰す!…こいつをやるぞ!」

剛君の合図で目の前に拳が飛んできた!

顔に強烈な痛みを感じると足がよろめき倒され身体にも痛みを受けた。

「やめ…やめてよ!」

僕が叫ぶと剛君達は盛り上がり更に痛めつけてくる。身体は痛み視界がかすみぼやけていくと…そこへ、バァン!!という音を立て誰かが入ってきたのがぼんやり見えた。

「らいと…君…?」

僕は殴られ見えづらくなった目で見るとらいと君の怒り叫ぶ声が聞こえた。

「みら!?大丈夫か?」

剛君達は僕を殴るのを止め、らいと君に近づいていく。

「らいと!お前…転校してきて早々生意気なんだよ……」

剛君がそう言いながら手下に合図をする。一人がらいと君に殴りかかるとそいつの身体は衝撃音と共にくの字に曲がり倒れてもがいていた。

僕は痛みを堪えているとらいと君は叫ぶ!

「お前ら!俺の大切な友達にひでぇ事しやがったな…お前らは…それ以上にボロボロにしてやる…。」

らいと君が叫ぶと別の手下も襲いかかった。三人共身体はらいと君以上に大きくガタイがいいのにらいと君に一人は一瞬で倒されたんだ。手下はらいと君を羽交い締めにすると剛君に合図をし剛君は襲いかかっていく。らいと君は身を柔軟にし手下が怯むと一瞬の隙をつき腕を取り一本背負い!!別の手下は衝撃で悶え気絶した。

「らいと…君…凄い……」

らいと君の戦いを見ているとそこへ先生が入ってきたんだ。

「何してる!お前達!!」

剛君は先生に泣きついた……

「先生!らいとが急に襲いかかってきたんだ!」

目に涙を浮かべ演技をする剛君。

「なんだと!本当か?黒闇!?」

先生は怒鳴りつけるとらいと君も怒りの声をあげる。

「おう…先生か…お前…今までも南雲が虐められてきたのを黙認してきただろ…」

先生はらいと君の言葉に心当たりもあったようで誤魔化すようにキレて更に怒鳴る。

「黒闇!先生に向かってその口の利き方は何だ!?」

先生の怒鳴り声に彼は先生を睨みつけると拳を握り声を上げた!

「黙認も…人を傷つける暴力なんだよ!!」

彼の拳は先生の顔の前で止まり踵を返すと先生のズボンは水が染みていた。

剛君がらいと君から逃げようとして捕まる。

「お前は…」

らいと君が剛君の胸元を絞りあげ身体は徐々に浮き上がる。ガクガク震える剛君の身体……。

「これが人の痛みだ!!」

らいと君の拳は剛君の顔面を捉え剛君は吹き飛ばされ気絶した。僕も痛みと安心感で気を失いそして…目が覚める…。

僕の身体は誰かに静かに揺らされていた。

「ん?…あれっ?」

気がつくとらいと君の背中だった。

「お?気がついたか?みら?」

僕が起きると嬉しそうに声をかけてくれたんだ。

「僕…ごめんね…らいと君。迷惑かけたよね…」

僕を背負った彼は笑いながら優しく答える。

「大丈夫だみら。お前が食わせてくれた赤いきつねと緑のたぬきは俺を救ってくれたんだ!そのお礼だ…」

僕を背負ったまま何かを思い出し呟く。

「みら…お前の小説…また読ませろよな」

「うん…ありがとうらいと君…」

ぐぅーーっ…突然彼のお腹が鳴ると僕は笑いながら言った。

「らいと君?赤いきつねと緑のたぬき買っておいたよ…」

僕達を繋げたのは…二つのカップ麺なのかも…ね…。

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