第10話 森へ


「お庭で遊んできまーす!」


 お昼を食べてすぐ、バスケットを持ってお屋敷を飛び出した。

 裏口から出ると、お店が並ぶ通りとは違い整備されてない砂利道が続いている。

 そこを走っていくと、段々と地面が砂利から土へと変わって、周囲は木々に覆われて行く。

 森に入ってそのまままっすぐ、最初に出てくる大木(目印にリボンを巻いておいた)を左に進んで大きな石(目印にキズをつけておいた)を右に曲がる。


 着いた!

 一面に赤、白、黄色、ピンク、紫のかわいい花が咲いた花畑。

 冠にするにはたくさん摘まないといけない。花束だとしてもそれなりの数が必要だ。しかも2人分。

 なるべく色が均等になるように摘んでいく。

 摘んだ花は、持ってきた白い布に包んだ。これで帰るまで萎れないといいんだけど。


「あ、四つ葉のクローバー!」


 花々の隙間を埋めるようにはえているクローバーの中に、四つ葉を見つけた。しかも、寄り添うように2つもはえてる!

 なんだか良いことがありそう。

 それに、クローバーはうちの苗字でもある。このクローバーもプレゼントにしよう!


 ちょっと移動してはしゃがんで花を摘み、また立ち上がって移動してしゃがむ。


 そんなことをひたすら繰り返していたら、膝と太腿が痛くなってきた。

 ずっとスクワットしてるようなものだもんね。

 膝を伸ばして立ち上がる。

 そういえば、今何時だろう。

 時計は持たせてもらってないから、体感と太陽の角度で推測するしかない。

 たぶんまだ、おやつの時間にはなってないと思うけど……


――ガサッ


 何かが動いた音がする。


――ガサガサッ


 近くの茂みだ。

 恐る恐る振り返ると、ボッと火柱が上がった!?


「なになになになに?」


 身構えると、茂みから出てきたのは一匹のトカゲだった。

 トカゲといっても大型犬くらいの大きさ! もはやモンスター!?

 じっと睨まれて動けないでいると、トカゲが火を吹いた!!


「ひいいいいいい!!」


 猛スピードでトカゲが追いかけてくる! 逃げるしかない!

 手からバラバラと花が零れ落ちたけど、構ってられない。


 トカゲを撒くためにぐちゃぐちゃに走り回った。

 ああ、これじゃ帰り道がわからなくなる。でもまっすぐ走ったらトカゲに追いつかれる。


 と思ったら、行き止まり!?


 目の前の地面に先がなかった。崖!?

 振り向くと、トカゲがもうすぐそこまで来ている。


 どうする? 戦う?

 その辺の石をぶつければ……でもそれで怒って余計に襲ってきたら?

 やっぱり逃げるしかない。でもどこに?


「あ……あ……」


 情けない声を出しながら、じりじりとトカゲに追い詰められていく。

 どうしようどうしようどうし――


「――――ッ!」


 無意識に後退っていた足が、地面を踏み外した。


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