おまけ
「じゃあ、もう私は行きますので」
これ以上変な雰囲気になってたまるか、と掴んだシャツを離して立ち上がる。
テーブルの上のティーセットを持って扉まで歩く。両手がふさがってるので扉を開ける為に団長さんも後ろからついてきてくれる。
……あ、そうだった。私、今日はこういうことを言うために来たんじゃなかった、言いたいことはお礼と、もうひとつ。
取っ手に手をかけ扉が開かれる寸前、立ち止まり、隣にいる団長さんに向き直る。
「……1ヶ月、お疲れ様でした。無事に帰ってきてくれて、すごく嬉しいです。……おかえりなさい」
色々あって、大事な大事な事を伝えられていなかった。本来なら最初に言うべき事なのに、なんやかんやで後回しになってしまった。
この1ヶ月、団長さんが居ないことは不安もあり、寂しかった……なんて言えないけれど、こうやってまた話せてお茶が出来る事が嬉しいのだと伝えるのは大事だろう。
しかも、先達から教えられていた日数よりかなり早く帰ってきたのだ。
この人、そのために絶対何かしら無理したはず。労うくらいはしてもいいよね。
「……あれ?……どうされました?」
真顔で固まる団長さんが目の前に居た。
……え?私そんなに変な事言った?
「隊服、今の私は着てないって……言いましたよね?」
そう言うと、団長さんは空いた片腕を私の頭に回して手のひらで包む。そして軽く引き寄せると、少しかがんで私の額に唇を落とした。
それはそれはとっても、慣れた手つきで。
私は何が起きたか分からず、放心状態。
「ああ……フラグ、というものにならず良かった。頑張って早く帰って来たかいがありました」
手のひらが私の首筋に滑り落ち、親指で頬を撫でられる。
極上の、笑顔と色気……というか慣れた手付きに意識が戻った。
「ケイ?」
「はいっ!?」
名前を呼ばれて返事したら声が裏返った。
私の反応に満足したのか声を出して団長さんが笑う。ティーセットを持っているので抵抗出来ず、どうすることも出来ないのをいいことに、団長さんはまた顔を近付けた。
「ただいま」
聞いた事の無い色気増し増しの団長さんの柔らかな声が耳元で響く。
「んぎやあああーーーーーーーー!!!」
その夜、限界を迎えた私の叫びが宿舎に響いたとか何とか。
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